創作における「選択肢と確率」

そもそも創作って何をしているのか?

  • まず「折り紙の創作とは無数の選択肢から最良と思われるものを選び進める作業である」と仮定する。
  • もう一つ、「良い選択肢を見つけられるかは、確率である」と仮定してみると、割といろいろなことが説明できる。
  • 知識や経験は選べる選択肢の広さや質。良い選択肢を選べる確率が上がる。
  • いわゆる「折り紙設計」は、制限を加えて選択肢を選びやすくする方法。
  • 理屈上では、確率は低いものの、いきなり傑作を創作できる可能性もある。
  • 選んだ選択肢が作品となり、作風やセンス・個性になる。
  • 「良い作品を創作するには確率を上げて試行回数を増やせ」。

それぞれ詳しく。

まず「折り紙の創作とは無数の選択肢から最良と思われるものを選び進める作業である」と仮定する。

折り紙の創作とはいったいなにをしているのか? もちろん自分の作りたい形を折り紙で表現するというのが創作なのですが、その時、具体的にどのような作業をしているのかというような話です。いろいろと考えていたのですが、私の場合は、「折り紙の創作とは、無数の選択肢から最良と思われるものを選び進める作業」というのが一番腑に落ちる言葉になりました。たくさんの選択肢から、ある程度先を読みつつ試作し、なるべく良さそうな選択肢を選びながら進める。手詰まりがあれば別の選択肢を模索する。「試行錯誤」の一言でも表現できてしまうのですが、その内容はこれではないかと思うのです。

https://www.folders.jp/t/shisaku.html

関連記事。なお元となったメモは2011年。考え始めたのはもっと前。

もう一つ、「良い選択肢を見つけられるかは、確率である」と仮定してみると、割といろいろなことが説明できる。

ただし、当たり前の話ですが、常に良い選択肢を見つけられるとは限りません。全てがうまく進む完璧な選択肢に出会えることはそうそうなく、多くの場合は出来ること・出来ないことのバランスをみながら妥協して「その時点で最良と思われるものを選ぶ」ことになります。この良い選択肢を見つけられるかは言ってしまうと運であり、うまくいく時はあっさりと見つかりますが、何十回と試行錯誤しても、今ひとつという選択肢しか見つからないケースもあります。一定の確率でとても良い選択肢が存在するはず(と信じたい)なのですが、何度ダイスを振っても目的の目がでないことはあるものです。これを「良い選択肢を見つけられるかは、確率である」と考えてみると、創作におけるいろいろなことが割とうまく説明できるようになります。少なくともなんとなく分かったような気にさせられる程度には、説得力がある解釈になります。

知識や経験は選べる選択肢の広さや質。良い選択肢を選べる確率が上がる。

一定の確率で当たりの選択肢が見つけられるのなら、重要なの確率をなるべくあげることです。ここで知識や経験が役にたちます。
そもそも、知らない技法を使った選択肢は選ぶことができないし、知っていたとしても初めて使うのであれば、その成功率は低いはずです。多くの作品や技法を学び、それを使えるようになることで、良い選択肢を見つけ、進められる確率は大きく上がります。
よく創作に慣れている人が、そこそこの作品を短時間で創ってしまうことがありますが、これは取れる選択肢が桁違いに多く、先を読む能力も高いので試行回数自体が少ないからだと説明できます。単純に当たりだけでなく大当たりの確率も違うと考えると、ダイスを振る回数に大きく差が出そうだいうことがわかるでしょう。なんというか俗な例えになりますが、創作作業ガチャを回すとき、初心者はSSRが0.001%くらい、Rでもやっと1%くらいなのに対し、創作に慣れている人はSSRが0.1%、Rが50%くらい。多分このくらいの差があります。

いわゆる「折り紙設計」は、制限を加えて選択肢を選びやすくする方法。

確率を上げる方法の一つに、ある程度整理・体系化されている創作方法(いわゆる「折り紙設計」)を使うというものがあります。
これを選択肢と確率という面から考えると、「ルールを設け選択肢を限定し、一定以上の質の選択肢を選びやすくする」ということになるでしょうか。うまく使えば、扱いにくい選択肢を除外して、試行回数を大幅に減らすことができます。また、基本形や定石的な構造なども、ある程度のところまではダイスを振らずに進める方法と考えられます。
見方を変えると、ルール外の選択肢を見落としやすくなるということにもなります。つまり外れは減るけれど、大当たりも減るのです。経験上、変則的な構造が最適解というケースは割と多いので、悪い意味でこだわり過ぎない方がよいかもしれません。なお、その変則的な構造もルールに含めることもある程度可能ではあるのですが、そうなると選択肢が多くなり過ぎて、扱いが難しくなります。(具体例:整数比角度系とか)

理屈上では、確率は低いものの、いきなり傑作を創作できる可能性もある。

気がついた方もいるかと思いますが、理屈の上では初めて創作する人が傑作を創る可能性もあります。少ない試行回数・低い確率でいきなり大当たりを引く可能性はゼロではありません。複雑な作品の場合はダイスを何十回も転がすことになるので、いきなり傑作というのはまずないでしょう。ただし、シンプルな作品であれば話は別で、数回のダイスで大当たりが続くことがあってもおかしくはありません。

選んだ選択肢が作品となり、作風やセンス・個性になる。

良い作品を創作するには、もう一つ重要なことがあります。「なにを基準に良い選択肢と判断するか」です。どれだけ選択肢を広げ確率を上げても、選ぶ基準がダメでは良い作品は生まれません。良い選択肢とはなにか、更にいえば良い折り紙作品とは、自分の作りたい形はなにかを考えることで、なぜその選択肢を選ぶかを決めることができるようになるのです。
最終的に選んだ選択肢が作品となり、作者の作風や個性・センスとなります。これは折り紙の技術だけではなく、題材等その他の知識や経験も影響してくるでしょう。
言い換えるならこれは創作中の作品への「批評」であり、多分今回の「選択肢と確率」とは別の、もう一つの創作において重要な話になりそうです。ちゃんと考えて出力すると多分このテキストと同じくらいのボリュームになる。

「良い作品を創作するには確率を上げて試行回数を増やせ」。

以上、創作作業を選択肢と確率として考えてみましたが、予想以上にいろいろなことを、それっぽく説明することができました。
最後にこの考え方から導き出される結論をまとめると、良い作品を創作するには「確率を上げて試行回数を増やせ」そして「作品について考え批評せよ」となります。結局王道はなく、当たり前の結論になるのです。
また、創作初心者・中級者は、基本形や定石的な構造を積極的に利用して、ハズレダイス率を減らしつつ経験値を上げるのが上達の近道なのかもしれません。創作も数をこなせば、ある程度までは上手くなるもので、これは実際辿った創作者も多いと思うし、実例も最低1件知っているので間違いではないはず。

余談となりますが、この考え方だと、よく言われる「創作をしたければ、自作多作含めてとにかくたくさん折れ」は実は根性論とかではなく、割と適切なアドバイスなのかもしれない。