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折り図tips:重なりは実物と同じ順番で描くとよい

折り図の重なりは、基本的にはなるべく実物と同じ順番で描くことを強くおすすめします。重なりの調整など少し手間に感じる場合もあるかもしれませんが、先の手順や、修正・変更する場合を考えると、実物通りの順番が一番作業しやすい場合が多いです。

実物と違う重なり順の場合、その図では問題なくても、先の手順で苦労する場合もあります。実例として三角に折ってからの中わり折りを見てみます。

重なりの調整は、パーツごとのグループ化や、「前面/背面にペースト」などの機能を活用するとよいでしょう。というか使わないとかなり辛そうです。

https://www.folders.jp/uc/2018/431/

https://www.folders.jp/uc/2018/587/

ちなみに例外として、例えば完成図などの変更が必要ない図であれば、あまり問題にならないケースもあります。特にユニット作品などの場合は実物と合わせようとすると相当な手間がかかるので、完成図等に限れば問題ないように思います。

ということで、「次の図を描く自分のために、正しい順番で重なりを描こう」。


inkscapeの半透明オブジェクト問題の検証

inkscapeで作られたデータは、SVG形式のままでは問題が発生する率が非常に高いため、基本的にPDF経由でIllustratorに読み込みます。この際に、半透明化の機能を使ったオブジェクトが消えてしまう場合があります。

まずはこの問題に対する有志による検証です。他にも発生しやすい問題がまとめられているので、inkscapeで折り図を描く(かつ投稿などをする)のであれば必読です。

https://sites.google.com/site/origamidiagramsstudygroup/guideline/inkscape

inkscapeでは、オブジェクトを半透明にする方法として、RGBA(赤緑青+透明度)のAの値を変更する方法と、不透明度の項目の値を変更する方法があります。このうち、不透明度を使った半透明オブジェクトがPDF読み込みの際に非表示の状態になってしまいます。ちなみにRGBAの方法であれば問題がなさそうですので、もし必要であればこちらを使うべきでしょう。

読み込んだデータを詳しく見てみると、不透明度を使ったオブジェクトは、色のついたオブジェクトに半透明のマスクをかけたような状態になっているようです。このマスク処理が読み込みの際に正確に反映されず、非表示もしくは完全に透明なマスクとして処理されているというのが原因だと考えられます。対してRGBAの方法を使ったデータの場合、オブジェクト自体に半透明の設定がされている状態になります。データの構造がシンプルな分、問題も発生しにくいのでしょう。

RGBA(アルファチャンネル)を使った半透明データをAIで読み込んだ場合の不透明度の状況。

ちなみに、強引な対処方法としては、正確に読み込めないオブジェクトを含むPDFを一旦別のアプリケーション(MacOS標準のプレビュー等)で開き保存し直すと、PDF自体が別エンジンで書き直されるのか読み込み可能な状態になります。ただしデータの構造等はひどい状態になり編集等に大きな支障が出る、また他の問題が発生している可能性もあるので、あくまで最後の手段とすべきでしょう。

そしてここからが新情報。今回の検証のため最新バージョンのinkscape(MacOS版1.2.1)で確認してみたところ、書き出したPDFが不透明度・RGBA共に半透明を維持した状態で読み込めることが分かりました。

PDFの情報を見比べてみると、書き出しに使われているcairoライブラリのバージョンが上がっていました。また、読み込んだデータを見てみると、オブジェクト+半透明マスクという構造自体は変わらないものの、この二つを含むグループに対して不透明度の設定がされていました。恐らく書き出されたPDFデータの構造などが改善されて、読み込みの精度が上がっているようです。

最新版inkscapeで書き出した不透明度を使ったデータをAIで読み込んだ場合。クリッピングで階層が増えていて、グループに対して透明度の設定がされている。

ということで雑にまとめると、

  • inkscapeのバージョンによって発生する問題は変わる。基本的に改善されているのでなるべく最新版を使うとよい。
  • 改善はされたものの、グループ状態の変化等で半透明化が解除されてしまう可能性もあるので、引き続きRGBA側の機能を使う方を奨励。

となります。

最後になりますが大前提として。異なるソフトウェア間でのデータの完全な再現は非常に難しく、発生した問題を発見し一つずつ検証・解決する必要があります。たとえ同じソフトウェアでも、バージョンやWin-Mac間の差でレイアウト等が再現されない場合もあります。精度の高いデータの変換・読み込みには、データを用意する側とそれを読み込む側の、双方の理解と準備・対策が必要になるのです。


折り図tips:共通のアピアランスを選択

Illustratorには、共通のアピアランス(塗りや線等の設定)のオブジェクトを選択する機能があります。

メニューの「選択」→「共通」→「アピアランス」にあります。

共通の「塗りと線」の場合、山折り線・谷折り線などの鎖線が区別されず選択されてしまいますが、「アピアランス」であれば同じ設定の鎖線等が選択できます。必要に応じて使い分けるとよいでしょう。


折り図tips:テキストの接続と分割スクリプト

Illustratorで使えるテキスト処理のスクリプト2種。折り図描きというよりは折り図編集に便利なもの。

joinTextFrames

複数行などに分かれたテキストを1つにまとめるスクリプト。PDFなど他の形式から読み込んだ際の手直しに使える。縦方向の行だけではなく、文字詰め等でバラバラになりやすい横方向にも繋げてくれるのが非常に便利。

http://www.wundes.com/JS4AI/

テキストばらし

こちらは逆に複数行のテキストを1行ごとにバラバラにするスクリプト。作品のタイトル等、スプレッドシートからコピペしたリストなどを分けるのに便利。

http://d-p.2-d.jp/ai-js/pages/01_scripts/text/index.html#10_split_text_line


折り図tips、 自由変形ツールがわりと便利

Illustratorには、「自由変形ツール」という機能があります。各種変形ツールを一つにまとめたような感じの、それなりに便利な機能です。 キーボードショートカットは”E”。単体キーです。「バウンディングボックス」と似ていますが(非常に紛らわしい)、こちらのほうが出来ることが多いです。Adobeももう少し機能を整理すればいいのに。

本題。普通に変形ツールとして使ってもいいのですが、特に拡大縮小とシアーを同時に使用する動かし方が折り図では便利です。

  • 変形させたいオブジェクトを選択
  • 自由変形ツールに切り替え
  • 四角く囲まれたバウンディングボックス的な枠の、カドと辺の中央に操作ポイントがありますが、今回は辺の中央の操作ポイントをドラッグ。
  • 自由に動かして、シアー等の変形ができます。(古いバージョンや操作手順によっては、コマンドキー(⌘)を押す必要があります)

フチを折る観音折りや、簡単な立体図のようなケースで使えます。


折り図を描く際に設定しているアクション

AIには、「アクション」という一連の作業を記録・実行する機能があります。

具体的には、よく使う機能や定型の一連の作業、数値の入力が必要なものなどを登録しておくとよいでしょう。また、ショートカットを設定できるので、よく使うものは割り振っておくとより便利です。

利点は、ツールの持ち替えや、ポインタの移動、数値の入力等を省略できることで、一つ一つにかかる時間は数秒程度でも、何百回と繰り返すことを考えれば大きな差になります。また、数値の入力や同じ作業の繰り返しでは、ミスを防ぐ効果も期待できます。

折り図を描く際に、実際に使っているものをいくつか紹介します。

・水平方向に反転、垂直方向に反転

変形パネルのメニュー等もあるけれど、わりと使用頻度が高いのでマウスを動かさずに呼び出せるのは便利。

・45度、-45度、22.5度、-22.5度の回転

45度はともかく、22.5度については変形パネルへの数値入力が割と面倒。 変形・回転ツールは22.5度の回転は使いにくいし。作品によっては30度や15度なども用意しておくと便利。

・拡大、縮小

それぞれ変更率を決めておく場合は数値入力が必須なので、アクション・ショートカット化は有効。

過去記事より:折り図tips:拡大・縮小は率を決めておくとよい

・各種グラフィックスタイルの設定

グラフィックスタイルパネルからスタイルを選び選択するより、ショートカットの方が早い。 ちなみに直接線幅等を変えていないのは、グラフィックスタイルを入れ替える場合の汎用性のため。同じ名前にしておけば、スタイルを入れ替えることができます。

表面、裏面、折り筋、山折り線、谷折り線などは、よく使うのでおすすめ。私の場合はこれに加えて矢印用の線、白い記号用、点線(太)、点線(細)を登録しています。

・特定のメモのあるオブジェクトを選択

AIでは、属性パネルに「メモ」というテキスト情報を持たせられる項目があります。あまり使われていないっぽい機能のですが、実はアクションからであれば検索キーとして使うことが可能です。 例えば、複製して使う前提の回転・拡大等の記号などに「記号」というメモを加えておけば、アクション一発で選択状態にできるようになります。 それ以外だと手順の数字に専用のメモを振っておくのがおすすめ。

ちなみにメニュー等からの検索では利用できないようなので、アクションやスクリプトを使わないと活用は難しそう。せっかくオブジェクトごとに自由な情報を追加できるのに勿体ない。

・各種スクリプト

アクションではないですが、よく使うスクリプト等にもショートカットを設定しています。

過去記事より:Adobe Illustratorでスクリプトを動かすプログラマブルキーボードが便利だった。


分かりやすい折り図と重なり表現

分かりやすい折り図とはどのようなものだろうか?

  • 分かりやすい折り図はスムーズに折れるため、そもそも分かりやすいこと自体に気がつかないことが多いはず。
  • あえて分かりにくい図と比べてみると面白いのではないだろうか。
  • 折り図で表現するのは、「前の手順の結果」、「その手順で何をするか」は必須。できれば「その手順の結果を予測させる」とより良い。
  • 適切な重なりを描き、上記の3つを表現することにより、折り図は分かりやすくなる。

ということで、基本的な中わり折りの手順を例にして、紙の重なりの表現について少し説明してみます。

この中わり折りの説明図を分かりにくいと感じる人はあまりいないのではないでしょうか。簡単な図ですが、手順を表現するために紙のずらし方などいろいろな工夫がされています。

こんな感じです。「その手順で何をするか」と「前の手順の結果」を、紙の重なりで見せるようにしています。

逆方向にずらした図と比べると、「分かりやすさ」が分かりやすいですね。紙の重なりが分かるように図を描くのはとても重要です。

ずらし無しはこうなります。形だけでは、中わり折りか後ろに折るのかが分かりません。少し出ている谷折り線と、矢印の形でようやく中わり折りと判断できます。

もう一つ、中わり折りできる隙間が複数ある場合などは、特に重なりを描くことが大切です。「手前の隙間で中わり折り」など、ネームで説明することもできますが、ぶっちゃけネームは読んでもらえないことが多いので、できるだけ図の方で表現したほうが良いです。

紙の重なりの表現は、手間はかかりますが適切に描けば折り図がとても分かりやすくなります。繰り返しとなりますが、「前の手順の結果」と「その手順で何をするか」が表現できているかを意識して作図するとよいでしょう。


カモシカ解説

折紙探偵団マガジン181号カモシカの折り図が掲載されました。作品と折り図の解説を簡単に箇条書きで。


なぜカモシカ?

  • 昔折ってみたらどうなるかと考えた事があった。小さい頃に家族と訪れた鈴鹿の日本カモシカセンターでの事。
  • そういえば作例が少ない。
  • それなりに親近感のある題材。日本の動物っていいよね。
  • というような事を、「シカもカモシカもたしかシカだがアシカはたしかシカではない」という早口言葉からふと連想した。まあ切っ掛けなんてそんなものです。


着想と構造等

  • 頭部をカエルの基本形から折ることができそう。ツノの長さとか丁度良さそう。
  • とりあえず外側にヒダを配置して頭部の構造を折り出す。
  • ヒダと内側の22.5度の構造を合わせて前脚の位置と長さ決定。この辺は22.5度の距離感で決めている。
  • 後脚の位置と構造はかなり悩んだが、最終的には効率と尻と尾の折り出しの良さから現在の位置と構造に決定。特に前脚付け根から後脚への沈め折りは会心の一手(手順104)。
  • 頭部は現物(剥製だけれど)と見比べながら試行錯誤した結果、カエルの基本形からツノの位置をずらす構造を採用。目の折り出しに余裕ができた、大きすぎた耳のカドが適度に小さく良い感じの形になるなど、ほぼ全てが良い方向でまとまった。
  • 後脚はいろいろ比較検討した結果、ぐらい要素少なめの形に収まった。また足先についても紙の厚みがうまく分散された。ある程度はどう折っても形にはなる部分で、最善と思われる手を比較検討するのは大切。

手順

  • 6+√2の折り出しはこれまでとは違う方法。より折りやすく使いやすいはず。
  • 25と55の繰り返し感は韻を踏んでいるようで面白い。
  • 61-62で一旦沈めてから戻すのは、折りやすさと100で立体図を描きたくなかったから。難しい手順で一度先に折っておくのはかなり有効。
  • 頭部の手順はちょっとややこしいけれど、構造の制約上、多分これが一番折りやすい。
  • 111、113の折り筋は、つけておくと折りやすさがかなり違う。
  • 134は前の隙間を広げて折る。後ろでも折ることができるけど収まりは悪くなる。
  • 148、カドの先の蹄の部分は、隙間の位置は違うけれど、前後共に厚みの条件は同じ。
  • 153、尾の折りだしとロックを兼ねた手順。個人的にすごく好きな構造。
  • 163他、ツノをずらした最大の利点は耳の形、特にカドの角度が90度になったことだと思う。
  • というような折り図の工夫や意図等を読み取れると、折り図を読むのが少し楽しくなると思う。でも普通しないし相当意識しないと出来ない。

その他

  • 目の部分に裏面が出るので、頭の部分だけ裏打ちして色分けするとよい。
  • 作例は揉み紙。講習では里紙(50cm)を使用。
  • 題材は少し地味だけれど、構造・造形共に作者満足度の高い作品です。ぜひ折ってみてください。


折り図tips:拡大・縮小は率を決めておくとよい

拡大・縮小を行う際に、あらかじめ拡大率を決めておいて、それ以外は絶対に使わないようにすると楽です。

理由は部分拡大を戻す時に便利だから。また拡大を挟む図の修正があった時にも、拡大率が決まっていれば迷いません。
ちなみに、神谷個人は125%と80%を愛用しています。拡大率としては少し大きめではあるものの、入力しやすいのが利点。部分拡大等で一気に大きくしたい場合は、125%拡大を複数回行います。
AIでは、アクション機能等で登録しておくと便利ですね。

また、折り図を拡大するタイミングの目安は、
・図が半分くらいに折り畳まれる場合
・山谷の鎖線が見えない場合
・紙の重なりの隙間が埋まる場合
あたりでしょうか。図全体の大きさではなく、折る部分の大きさに合わせる事を意識するとよいでしょう。画面上のみで作業していると図が小さくなりがちなので、迷ったら拡大するくらいでちょうどよいのではないでしょうか。

余談ですがロバート・ラング氏は何回か拡大すると200%になる拡大率を使用しているそうです。とても合理的な、なんかとてもラング氏らしい話。

 


折り図tips:折り筋の起点終点を短くするか?

折り筋線の紙のフチがぶつかる時の処理は、いくつか派閥(?)があります。
A. すべてのフチから離すように短くする
B. その折り筋がついている面のフチのみ、線から離すように短くする
C. そのままフチまで延ばす
主にこの3つでしょうか。

まずAは手書きの折り図時代からの伝統的な方法です。折り筋と紙のフチの差が見やすいのが最大のメリットです。デメリットは形が変わる度に調整しなければいけないため手間がかかる事でしょうか。特に複雑な図になればなるほど面倒になります。
元々は手書き折り図の時代に、折り筋を区別するための方法として使われたのではないかと思います。手書きであれば手間は問題にならないため(どっちにしても図ごとに全部描かなければいけない)、この方法が標準的であったのでしょう。

 

次、Cについて。メリット・デメリットはAの逆になります。紙のフチと折り筋の判別がしにくい。フルカラーの折り図など、紙のフチと折り筋の線が判別しやすい場合であればこの方法でも問題ないかもしれません。グレースケールだと、色の濃さを変えたとしてもちょっと分かりにくいのではないかと思います。また細かいことを言えば、色を変えると紙のフチの線の上に折り筋の線が乗るのも問題点ではあります。

最後のBは、上記2つの折衷案のようなものになります。メリット等も大体中間くらいになりますが、見やすさはあまり損なわれない気がします。他特筆すべき点としては、線の位置関係から紙の重なりの前後関係を表現できます。これは他の2つにない利点です。

ちなみに神谷の場合は基本的にBを採用しています。Aは手間的な問題から却下、Cは基本グレースケール折り図なので分かりにくいという直感による消去法です(なお理由は後付け)。

 

折り図を描く際には、基本的には図を進めるごとに短くしながら進めるのが効率的なのではないかと思います。スクリプトが使えれば少し楽になりますね。

なお手間の問題は、ドローソフト側から起点・終点から一定の距離が空白という特殊な鎖線が設定できれば、いろいろと解決しそうです。技術的には、たとえばFreeHandなら線の設定をPostscriptで書けるなら可能なのかな?

線を短くするスクリプト という事でAI用のスクリプト。