ずれやすい手順の傾向と対策

  • ずれやすい手順というものが存在する。
  • 基本的に創作者は折る技術が高い人が多いので、案外気が付かない。
  • ずれは絶対に起こるものと考え、なるべく影響の少ない手順を採用するとよい。

ということで、思いつく誤差の発生しやすい手順をいくつか挙げてみます。

  • 基準点が少ない手順(正確に折るのが難しい)
  • 角度や幅を2倍にするような手順(誤差が倍になる)
  • 細いフチや浅い角度など、折る部分が少ない場合(単純に難しいし、フチに対して垂直に折るような場合も折りにくい)

これらの手順をなるべく避けるとよいでしょう。特に上記のような手順が続く場合は誤差が大きくなりがちです。

また、当たり前の話ではありますが、この逆のような手順であれば誤差が発生しにくい手順となります。ほぼ自明なものもありますが、一応書き出してみます。

  • 基準点が多い手順(ずれが発生しにくい)
  • 半分に折るような手順、さらにいれば大きな基準点からより細かい基準点を出すような手順(ずれがあっても分散される)
  • 漸近法を取り入れた手順(ずれが小さくなる)

ずれにくい手順は、同時に折りやすい手順であることも多いものです。特に折りの精度が重要な作品の折り図では、意識するとよいでしょう。


具体的な失敗例・改善例として、ヘラクレスオオカブト(『折紙探偵団コンベンション折り図集18』より)を見てみます。

まず手順9では基準が少なく折る部分が細いという、正確に折るのが難しいずれやすい手順です。次に手順11では手順9の基準と反対側、つまりずれやすい側を基準にして折っています。9がずれていると当然11もずれます。

さらには手順12では、幅を倍にして折り筋をつけています。11でずれていた場合、ずれの大きさが倍になります。

……書き出してみると酷い手順ですが、問題は創作者本人は正確に折れていたので(良くも悪くも折れてしまったので)、作図の段階ではずれやすい手順であることに全く気がつかなかったことです。その後、講習等にて問題点が表面化して、なんでずれるのかと手順の見直してやっと認識しました。恐ろしい。

その後、『秀麗な折り紙』に収録された折り図では、手順を再考してずれにくい手順を目指しました。失敗を活かして(?)逆の順番で折り筋をつけています。

まず元の図の12でつけていた折り筋をつけてから、15では半分の幅で折り筋をつけています。14で誤差があっても半分になり影響が出にくくなります。また16では上下の基準が使えるようにしています。

普通、異なる手順を比べてみる機会はあまりないと思いますが、実際にみると、誤差の出やすさ・出にくさがわかりやすいかと思います。機会があるたびに書いていますが、手順はとても大切です。

以上。繰り返しとなりますが、基本的に創作者は折る技術が高い人が多いので、案外気がつかないものです。単純な折りの精度だけでなく、紙の歪みなどでも誤差は発生します。ずれは絶対に起こるものと考え、なるべく影響の少ない手順を採用するとよいでしょう。