ドラゴン曲線を折る

ふと、ドラゴン曲線を折れないかと思った。

ドラゴン曲線とは、自己相似フラクタル系の図形。折り紙と関連がなくもないので、割と親しみのある図形です。何より名前がかっこいい。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%B4%E3%83%B3%E6%9B%B2%E7%B7%9A


折り紙関係者には前川淳さんのブログ記事がわかりやすい。

http://origami.asablo.jp/blog/2019/02/06/9033192

紙のフチがドラゴン曲線になるように平らに畳むとどうなるだろう? さらに4つ集めたものは平面充填となるので、繰り返しパターンが安定すれば、理屈上は無限市松模様(+外側の複雑な形)が折り出せる……はず。

というのを思いつき、折ってみたらこれが予想以上に面白い。ここまで先が読めないのは久しぶりで、見覚えのない形が現れるのがとても楽しい。


1段階目は座布団折り、2段階目は表裏同等ねじり折りのような形になる。

3段階目からなんとなく特徴が現れてきて、4段階目になると対角線蛇腹をドラゴン曲線状に曲げていくという作品の形がはっきりと見えてくる。


5段階目で展開図に繰り返すようなパターンが現れる。順番に大きくなる表裏同等ねじり折りとヒダの組み合わせという構造も明確になってきた。

6段階目はさらに複雑化。ついに内側に飛び出した部分の重なりの干渉が発生。いろいろ情報量が多い。なお、画像はスキャナで強引に潰して撮っているが、実は厚みがまるで高層ビル群のように酷い事になっている。

面白いのはここまで来ても次の段階がきれいに折れるか予測しきれないこと。おそらく形自体は紙の突き抜けなどを無視すれば可能、実際に折れるかはどうも読みきれない。面白そうだけれど、面倒なので折りたくない。


飛びたい人(通称はなのようせい)

翼が生えた人型の物体。創作時期は私が小学生のころ(一番古い記録は1992年だが、多分もう少し前)で、実は最初の創作作品候補の一つ。一応モデルはイカロスだったのだが、顔の鼻が目立つので「はなのようせい」とよばれていた。

基本構造、造形共によくある小学生が作った作品という感じで、1点を除き特筆すべきことはない。 本題はその1点の部分で、頭部となる内部カドを広げるように加工して顔の形と鼻となるカドを折り出している。これは吉野一生氏の虎の頭部と同じような構造であり、稚拙ではあるものの、当時の自分なりに内部カドの活用を考えた結果と言えるだろう。 ちなみに、この構造を見つけていた結果として、虎を見たときの感想が「実力がある人が使えば、同じような構造でもここまでかっこいい形ができるのか」という、おそらく他の人とは少し違うものになった。

一応、それなりに応用性もあり、内部カドの利用方法としては捨てたものではない。実際にサイクロプスなど他の作品で使用している。 発展させて顔なども試作したが、今のところ使う機会がない。


正方形から最大の正五角形を折り出す

正方形に内接する最大の正五角形の折り出し方。多分車輪の再発明。


正方形から正五角形を折り出す場合、一般的に知られているのは少し誤差のある方法です。また正確な正五角形の場合は、伏見康治先生の著書『折り紙の幾何学』に記載されている方法などが知られています(私の知っている中では一番古そうな出典)。実用としては全く問題ないのですが、ふと最大の大きさの正五角形を折り出す場合はどうなるのかと思い考えてみました。

まず、正方形に内接する正五角形は下の図のようになります。

この答え自体は明確なのですが、折り出し方法は意外と難く、正五角形のカドの位置の必要な比率を愚直に折り出すくらいしか思いつきません。 もう少し面白い方法はないかということで、とりあえずカドを結ぶ等の補助線を入れてみます。

眺めていて気がついたのが、対角線と新しく追加した補助線の交点です。補助線上の交点の位置に注目してみるとわかりやすいのですが、この点は補助線と対角線を黄金比(1:(1+√5)/2)で分割した位置になります。

ここまでくればもう出来たも同然(とまずは思っていた)、黄金矩形の対角線と、正方形の対角線の交点として折り出すことができます。

実際の手順は以下のようになります。一切の無駄のない、大変きれいな手順です。

ただし実際に行ってみると、基準点は折り出せたものの、次に折る基準がないことに気がつきます。 せっかくなので最後まで考えてみます。

次に必要なのは正方形の辺から9度傾いた線の折り出しです。方法はいくつかありますが、すでに折り出してある黄金比を利用するのが無駄がなさそうです。ということで、最終的な手順はこちらになります。

というのを見つけた後で前例を探してみたら、BOSのウェブサイトに、第一回折り紙の科学の国際会議の論文集にてMorassi氏が発表されていたという方法が紹介されていました。まず正五角形の対角線の長さを折り出し、それを必要な位置に移すという手順です。

https://britishorigami.info/academic/mathematics/folding-optimal-5-6-polygons/

以上。案外知られていない、実用性は微妙な最大の正五角形の折り出しです。


創作tips:指のヒダは幅を変えてもよい

指などを折りだす時のヒダは均等になっていることが多いが、幅を変えると表現の幅が広がる。

折りやすさや扱いやすさは等分が優れているので、必要な場合にアクセント的に使うのがよいでしょう。

創作tips:ヒダの折り出しの幅は割と自由度が高いのような構造も利用できます。

例:パラケラテリウム。中心の蹄を大きく折りだすためにヒダの幅を変えている。


折り図を描く際に設定しているアクション

AIには、「アクション」という一連の作業を記録・実行する機能があります。

具体的には、よく使う機能や定型の一連の作業、数値の入力が必要なものなどを登録しておくとよいでしょう。また、ショートカットを設定できるので、よく使うものは割り振っておくとより便利です。

利点は、ツールの持ち替えや、ポインタの移動、数値の入力等を省略できることで、一つ一つにかかる時間は数秒程度でも、何百回と繰り返すことを考えれば大きな差になります。また、数値の入力や同じ作業の繰り返しでは、ミスを防ぐ効果も期待できます。

折り図を描く際に、実際に使っているものをいくつか紹介します。

・水平方向に反転、垂直方向に反転

変形パネルのメニュー等もあるけれど、わりと使用頻度が高いのでマウスを動かさずに呼び出せるのは便利。

・45度、-45度、22.5度、-22.5度の回転

45度はともかく、22.5度については変形パネルへの数値入力が割と面倒。 変形・回転ツールは22.5度の回転は使いにくいし。作品によっては30度や15度なども用意しておくと便利。

・拡大、縮小

それぞれ変更率を決めておく場合は数値入力が必須なので、アクション・ショートカット化は有効。

過去記事より:折り図tips:拡大・縮小は率を決めておくとよい

・各種グラフィックスタイルの設定

グラフィックスタイルパネルからスタイルを選び選択するより、ショートカットの方が早い。 ちなみに直接線幅等を変えていないのは、グラフィックスタイルを入れ替える場合の汎用性のため。同じ名前にしておけば、スタイルを入れ替えることができます。

表面、裏面、折り筋、山折り線、谷折り線などは、よく使うのでおすすめ。私の場合はこれに加えて矢印用の線、白い記号用、点線(太)、点線(細)を登録しています。

・特定のメモのあるオブジェクトを選択

AIでは、属性パネルに「メモ」というテキスト情報を持たせられる項目があります。あまり使われていないっぽい機能のですが、実はアクションからであれば検索キーとして使うことが可能です。 例えば、複製して使う前提の回転・拡大等の記号などに「記号」というメモを加えておけば、アクション一発で選択状態にできるようになります。 それ以外だと手順の数字に専用のメモを振っておくのがおすすめ。

ちなみにメニュー等からの検索では利用できないようなので、アクションやスクリプトを使わないと活用は難しそう。せっかくオブジェクトごとに自由な情報を追加できるのに勿体ない。

・各種スクリプト

アクションではないですが、よく使うスクリプト等にもショートカットを設定しています。

過去記事より:Adobe Illustratorでスクリプトを動かすプログラマブルキーボードが便利だった。


創作tips:カドの長さと構造

展開図のわかりやすさ・美しさを重視する場合、基本的に「カドの長さ=構造」となります。当たり前の話ですが、使う構造でカドの長さが決まります。実際には逆に必要なカドの長さに合わせて構造を選択することになるでしょう。

22.5度系でのカドの長さ(折り返す位置)は図のようになります。正確には無数にありますが、代表的なものを描いてあります。この位置やバランスを覚えておくといろいろと便利です。できれば22.5度の距離感として叩き込んでおくとよい。

それぞれのカドの長さに対応する代表的な構造は以下の図のようになります。22.5度の場合は、二等辺三角形状の分子でカドの長さが決まることが多いので、キーとなる分子の大きさを意識して構造を選ぶとよいでしょう。


創作tips:4鶴の変形

4鶴は拡張性の高い便利な基礎構造ですが、得られるカドの長さや間隔が全て同じなので、カドの長さを持て余したり、バランスが合わない場合もあります。 そこで4鶴を構成する構造のバランスを変える事で、より無駄なく必要な大きさのカドを得ることができます。

まずは対角線上の2つの基本形のバランスを変えた場合。両側の部分は長方形になります。カドの間の領域を胴体として翼を持つ空想動物などに使えます。

次に基本形が重なるように変形させた場合。カドの間隔を利用し、昆虫作品で左右の部分を脚として使うなどが考えられます。

両方同時に行うこともできます。ここまで変形させると4鶴感はあまり残っていません。

今回は4鶴を例にしていますが、他の構造も同じように変形が可能です。基礎構造のバランス変更の利点は、なにより必要な長さのカドが無駄なく得られることです。逆に汎用性が低下し扱いづらくなること、比率や手順の複雑化などが短所となります。なるべくシンプルな構造を優先し、必要があれば変形・融合などを行うのがよいでしょう。


創作tips:ハバ作品化

「ハバ作品」とは、作品の対称軸に隙間を追加することで、立体化等の効果を得る技法です。正式名称は私の知る限りないのですが、だれともなく呼び始めた「ハバ作品」が通称となっています。

第8回折紙探偵団関西コンベンションにて、田中将司氏のアイディアを若手作家らが面白がっていろいろな作品を「ハバ化」して広まりました。(折紙探偵団マガジン103号、ハバリータ・はばはばたくとり)

余談ですが、この時作られた作品は伝承作品が中心だが、ハバ悪魔やハバムートなどバカバカしいものも多くとても面白かった。

この技法を積極的に使っているのは川畑文昭氏で、乳牛(折紙探偵団マガジン112号)やポニー3Dモデル(川畑文昭折り紙作品集ほか)などの作例があります。

また、立体化以外の効果としては、中心に隙間を作ることで紙の厚みによる紙への負荷を緩和させることができます。作例としてはヒツジで厚み対策としてハバ化を採用しています。

既成の作品を立体化したり、対角線への領域の追加と組み合わせて使ったりと、いろいろ活用方法がありそうな楽しい技法です。


創作tips:よく使われる定石構造

折り紙の創作では、よく使われる定石的な構造があります。良くも悪くも「枯れた」構造なので、新奇性はありませんが、汎用性のある優れた構造であることも事実です。22.5度系でよく使われる構造を紹介します。

「鶴の基本形」。当たり前だが、4つの大きなカドを折り出したい時には最適な構造となることが多い。シンプルイズベスト。

作例:チョコボ

「カエル(あやめ)の基本形」。中心に大きなカドがあるので、これをどう使うかがポイントとなる。一般的には尾のカドとして使われることが多いが、吉野一生氏の虎のように頭として使われるケースもある。

作例:

いわゆる「4鶴」。円配置で考えると、カエルの基本形とはバランスを変えたもの同士となる。紙の周辺から8個のカドが折り出せるので、翼のある空想動物でよく使われる。さらに発展させてカエル4個や9鶴等もそれなりに使われてるが今回は割愛。

作例:バハムート零式有翼の麒麟ホネガイ

紙の周辺から6個のカドを折り出す構造。『ビバ! おりがみ』の前川淳さんのカンガルーや、西川誠司さんのトラなどが代表的な作例。
作例:アルドゥインレッド13ベヒーモス

こちらも6個のカドを折り出す動物向けだが、対称軸が異なる場合の構造。伝承のブタ系の構造と考えることができる(参考:目黒氏のサイトより「チヂミブタ属」)。

いわゆる「鶴ドラゴン」。カエルの基本形や4鶴等と比べると、中心のカドがない分効率は良いが、一部のカドを内部から折り出すことになる。

紙の中心から4つのカドを折り出す構造。カドの位置を考えると座布団鶴ドラゴンだが、性質的には9鶴の方が近いかもしれない。たくさんのカドを折り出しやすく、自由度が高いので、紙の内部から複数のカドを折り出す時にはこの構造をベースに考えるとやりやすい。

作例:ディバインドラゴン

以上、比較的使用される率が高そうな7種です。ここからヒダを追加や比率等の変形を行うことで、大抵の題材に必要なカドを折り出すことができるでしょう。


創作tips:ヒダの幅を22.5度の構造と合わせる

ヒダを追加する場合、幅をその他の構造と合わせるとよい。

主な利点は、比率がきれいになるのと、ヒダの接続・融合がやりやすくなること。逆にデメリットは比率の折り出しが面倒になるケースもあることだろうか。

下の図は鶴の基本形にヒダを追加した例。分子の高さ(内心円)と同じ幅でヒダを追加している。

カエルの基本形の場合はこんな感じ。

他の構造との接続はたくさんの作品で行なっているが、比較的わかりやすい例として「ウィザード」を挙げる。上記のカエルの基本形の例と同じように周りにヒダを追加しているが、右上の部分で、内部の二等辺三角形と外側のヒダを接続している。

比率の測り方(?)や折り出しについては、折紙探偵団マガジン115号で記事を書いているのでぜひご覧ください。

https://origami.jp/magazine/115/

また、比率の折り出し方は毎回考えるのが大変なので、折り出し検索プログラムを作りました。HTML+javascriptでブラウザ上で動きます。

https://www.folders.jp/reference/reference.html