創作における「なんとなく」

創作で、「適当・なんとなく」とよく言いますが、実際どのように考えているのか?と疑問に思う人もいるかと思います。答えから言ってしまうと本当に「経験と勘からなんとなく」なのですが、これでは全く参考にならないので、比較的分かりやすそうな「カドの位置」を例にもう少しだけ詳しく考えてみます。

ある程度以上創作などの経験を積むと、「ある形を折り出すのに大体どのくらいの領域が必要なのか」が予測ができるようになります。もちろん完璧ではありませんが、それでもカドの配置や大きさを決めるには十分な情報です。折りたい形から必要な紙の領域と、さらにその情報を元にして大体のカドの位置などを予測し、その付近から使い易そうな比率や位置を選ぶ。実際にどこまで意識しているかはともかくとして、これがカド配置のケースの「なんとなく」の中身ではないかと思うのです。少なくとも自分の判断基準はそうであるとしか思えない。

さて、この考え方自体それなりにロジカルであると思うのです。ただ、これをだれでもできるかといわれると、恐らく難しい。そもそも前提として「知識や経験を元にした予測」なので、一定以上の知識や経験が必要になります。これに限らず、創作の技術や判断は本当に細かい技術や知識の集合体で、「知識と経験や、それに基づく勘」の割合が大きいものが多く、個別のケースであればある程度の説明はできるのですが、体系化は難しいのではないかと思うのです。

そして、そういった方法を使いたいのであれば、沢山折ってまず知識と経験を蓄えようという話になります。よく、創作をしたいという人への経験者からのアドバイスとして「いろいろな作品を折れ」と常に言われるのは、これが理由の一つなのではないのでしょうか。


折り図tips:折り筋の起点終点を短くするか?

折り筋線の紙のフチがぶつかる時の処理は、いくつか派閥(?)があります。
A. すべてのフチから離すように短くする
B. その折り筋がついている面のフチのみ、線から離すように短くする
C. そのままフチまで延ばす
主にこの3つでしょうか。

まずAは手書きの折り図時代からの伝統的な方法です。折り筋と紙のフチの差が見やすいのが最大のメリットです。デメリットは形が変わる度に調整しなければいけないため手間がかかる事でしょうか。特に複雑な図になればなるほど面倒になります。
元々は手書き折り図の時代に、折り筋を区別するための方法として使われたのではないかと思います。手書きであれば手間は問題にならないため(どっちにしても図ごとに全部描かなければいけない)、この方法が標準的であったのでしょう。

 

次、Cについて。メリット・デメリットはAの逆になります。紙のフチと折り筋の判別がしにくい。フルカラーの折り図など、紙のフチと折り筋の線が判別しやすい場合であればこの方法でも問題ないかもしれません。グレースケールだと、色の濃さを変えたとしてもちょっと分かりにくいのではないかと思います。また細かいことを言えば、色を変えると紙のフチの線の上に折り筋の線が乗るのも問題点ではあります。

最後のBは、上記2つの折衷案のようなものになります。メリット等も大体中間くらいになりますが、見やすさはあまり損なわれない気がします。他特筆すべき点としては、線の位置関係から紙の重なりの前後関係を表現できます。これは他の2つにない利点です。

ちなみに神谷の場合は基本的にBを採用しています。Aは手間的な問題から却下、Cは基本グレースケール折り図なので分かりにくいという直感による消去法です(なお理由は後付け)。

 

折り図を描く際には、基本的には図を進めるごとに短くしながら進めるのが効率的なのではないかと思います。スクリプトが使えれば少し楽になりますね。

なお手間の問題は、ドローソフト側から起点・終点から一定の距離が空白という特殊な鎖線が設定できれば、いろいろと解決しそうです。技術的には、たとえばFreeHandなら線の設定をPostscriptで書けるなら可能なのかな?

線を短くするスクリプト という事でAI用のスクリプト。


折り図tips:前面・背面にペースト

折り図を描く時の、紙や折り筋の重なりの調整方法には、「前面/背面にペースト」を使うと便利です。

選択されたオブジェクトのすぐ上、もしくは下にペーストする機能です。用紙面のすぐ上に折り筋を追加したい場合や、中割り折り等の場合に特定の隙間にオブジェクトを追加したい場合に使えます。それ以外にも修正や重なりの調整など、さまざまな場面で活用できる機能です。使おう。

重なりの順番を一つずつ入れ替えてもいいのですが、図が複雑になると非常に手間がかかります。また、グループ内への追加の場合には、更に手間がかかる場合もあります。状況に応じて使い分けるとよいでしょう。

FreeHandでは編集メニューのスペシャル項目(特殊なコピペ機能)内にあります。ショートカットを割り当てておくと使いやすいでしょう。私の場合はcmd+sft+Fとcmd+sft+Bを設定しています。(画像は割り当て済み)。

 

AIは編集メニューに項目があります。ショートカットはcmd+Fとcmd+Bです。

Inkscapeには、もしかして機能自体無いかも。ほとんど使っていないので詳しくは分からないけれど、使えないと大変そう。需要の高そうな機能なので、アドオンとかあるのかな?


折り図tips:パスの方向の反転

山折り線・谷折り線の終点が半端になってしまう場合の対処法です。

こんな感じに半端な長さの点線が残ってしまう場合です。山谷の折り筋は、起点となる点から外側に向けて直線を描くケースが多いと思いますので、実は結構発生しやすい問題です。これはパスの向きを反転させる事で問題を解決する事ができます。線の長さを調整してもいいのですが、拡大・縮小するとずれて調整し直しとなるのであまりお勧めしません。

FreeHandの場合、メニューの「修正」→「パスの操作」→「逆方向」でパスの向きを反転させる事ができます。よく使う機能なので、ツールバーに登録しておくと便利です。

 

結果、半端な部分は折り線の起点側になり、表示される部分はきれいな谷折り線になりました。

Illustrator(手元のCS5)の場合、探してみたのですがそれっぽい機能が見つけられませんでした。一応、

  1. パスを選択して複合パスを作成(cmd+8)
  2. 属性パネルの「パスの方向反転」オン、オフで切り替え
  3. 複合パスを解除(cmd+sft+opt+8)

という手順で反転自体はできるという情報は見つけたのですが、少々めんどくさい。直線であれば180度回転でもいいのですが、ポイントが多いオブジェクトの場合はちゃんと反転させるべきでしょう。

こういう時はスクリプトが便利です。絶対同じ事を考えた人がいるはずと思い探してみたところ、やはり作っている人がいました。

http://www.pictrix.jp/ai/ReversePath/

Illustratorでの作業では必須スクリプトとして愛用させて頂いております。この場を借りて一方的にお礼申し上げます。

これもショートカット割り当てのサポートアプリなどを利用して、呼び出しやすい状態にすると便利です。

最後にInkscapeの場合。せっかくなので確認したところ、Pathメニューにありました。

以上、鎖線の終点だけでなく、紙の重なりなどで山折り線(の短い線)が見辛い場合にも使えます。


折り図tips:紙の向きを分かりやすく

対称性が高く紙の向きを間違えやすそうな場合は、早い段階でカドなどを折って印となる形を作っておくと、向きが分かりやすくなります。

例えば次の図のように、「折ってあるカドが下」としておけば、分かりやすく、紙の向きや対称軸を間違えにくくなります。

(なおこの後対称的でない折り筋つけていくという、向きを間違えないで欲しい工程になります。)

小松英夫さんとの会話の中で出てきたネタで、小さな工夫の割にはかなり効果のある、正にtipsという小技です。


6-√2とマイナスの数値の折り出し

いつもの比の折り出しの話。

1+√2 : 4-2√2 : 1
=6-√2。多分折った事のない比率だ。
この手の場合は一辺の長さに対して1を折り出してから、1+√2を出すのがよさそうです。

このケースでは4と2-√2に分けるのが恐らく最適解。
意外に思われるかもしれませんが、2-√2はとても折り出しやすい長さです。22.5度の線1本で折り出す事ができます。

という事で折り出し手順。


ポイントは2-√2の折り出しで、見て分かるとおり、2も√2も折り出す必要がありません。
最後に1の幅から22.5度の線で1+√2を折り出せば、完了です。

 


 

さて、実はここまでは前置きで(ほぼ最適解であろう答えは出ているのだけれど)、ここからが本題。

もう1つ。6と-√2に分ける場合を考えてみます。
問題は-√2という数値を折り出す事ができるのか?という点なのですが……あまり実用性はないけれど、可能なのです。

今回使っている折り出し方の場合、カドから2本の線が交差するように内側に向けて基準線をつけるのですが、それを反対側……つまり外側にむけてやるとマイナスの数値を折り出す事ができます。

ただし、紙の外側に折り筋をつけることはできないので、実際には半分の長さなどで折るのがよいでしょう。
分かりやすい例として、3等分の方法を見てみましょう。分割方法は4と-1です。
という事で折り手順はこのようになります。なお実用性はあまりない。この方法が使われている・紹介されているのを私は知りません。

では本番。6と-√2の場合の折り手順です。折り出しやすさの都合上、6:2(=3:1)と-√2:2で折り出しています。

 


 

以上、よく考えてみれば当たり前のマイナスの数値の折り出し方法です。活用できるケースは限られているかと思いますが、いざ必要な場合にはとても便利そうです。

 


折紙探偵団マガジン115号(20期)クローズアップ「22.5度系の比の折り出し」(神谷哲史)

※比の折り出し方法等の解説です。合わせてご覧下さい。


塗りのある直線

  • 直線には塗りを設定しない方がよい
  • 画面に表示されなくても、面積ゼロの塗りオブジェクトが存在する
  • 環境によっては表示される場合もあり、不都合となる可能性もある

以下、詳しく。

ドローソフトでは、線などのオブジェクトに「線の色」と「塗りの色」を設定することができます。ほぼ全てのオブジェクトに対して色の設定自体は可能なので、必要のない部分にも塗りの色を設定する事が出来ます。

但し、例えば単純な直線のような、面積のないオブジェクトへ塗りを設定するのは意味がないので、相当特殊な理由がない限り避けるべきでしょう。

具体例として、谷折り線に塗りを設定した場合を見てみます。

まず、FreeHand MXでは、直線の塗りは描画されません。

折り図を描いていても、塗りがあること自体に気がつかないかもしれません。

さて、同じデータをIllustratorで開くとこうなります。

点線に設定された塗りが、細い線として描画されます。線が2重になっているようで紛らわしいですね。

さらに、PDFとしてAcrobatで開くと、AIと同様に線状に描画されます。前述のFHや、最近はInkscape製のデータで結構見かけます。

なお、同じPDFでも、MacOS標準のプレビューでは描画されません。

この例とは逆に、折り筋線のつもりで塗りのみのある直線をつかってしまうと、画面では見えるのに印刷では消えてしまう線になってしまう可能性があります。

表示が安定しない、無駄なデータを持つメリットはありません。面積のないオブジェクトには、塗りを設定しないように気をつけるとよいでしょう。


MZ-700に不可能はない

MZ-700とは、1982年にシャープより発売された、いわゆるマイコンで。不可能はないマシンとして(一部で)有名。実家に父の買ったこの機種があり、小さいころ簡単なBASICプログラムなどを書いて遊んでいました。

で、時は過ぎて数年前、懐かしいなあと思いながらネット上をふらふらしているうちに、見つけたのがこちら。「MZ-700に不可能はない」という言葉について、わりと熱い内容の記事となっています。

http://dic.nicovideo.jp/a/mz-700%E3%81%AB%E4%B8%8D%E5%8F%AF%E8%83%BD%E3%81%AF%E3%81%AA%E3%81%84

さて、この「不可能がない」は当然折り紙にも当てはまります。
実例としては、龍神を創作した時に考えていた事が正にこれなのです。折り紙でそんなことが「できるわけがない」という考えを意識的に捨てて、馬鹿馬鹿しいようでもまずは実際に試してみる。そこで得られたものを積み重ね、一つずつ「できるわけがない」を潰していく。改めて考えてみても、不可能はないという立場を取って挑戦したからこそ生まれた作品なのです。

恐らく折り紙に限らない話なのですが、創作者が「できない」と考え諦めたことは実現できません。一見無理そうな事でも「不可能はない」と考え試してみる事で、可能性が0ではなくなります。なによりこの手の事はとにかく試してみるのが重要で、もし完成しなくても得られるものは必ずあります。

以上、私の座右の銘でもあり、今日の一言の中でも、最も元ネタがわからないであろう「折り紙に不可能はない」についてでした。


15+4√2

今更ながらいつもの。本人がいたのに話し忘れていた。

比の折り出しの基本は、2つの「折り出しやすい数字」に分けることです。折り出しやすい数字とはという問題はありますが、今回の場合、4√2側に8を移して(つまり4(2+√2)だ)、7:8+4√2に分けることができます。
ということで折り出し方法を2種類。
まずは7:8と8+4√2:8(=2:2+√2)の2つの長方形の対角線を折り出す方法。
それぞれの数字に2の累乗数の「8」を組み合わせることで、折り出しやすい比率になっています。
もう一つ。1辺を8+4√2として、対応する7を折り出す方法。つける折り筋も少なく、対角線上に折り出せるので使いやすそうです。
どちらの方法も、7の側の位置は比較的簡単に変更できるので、同じような方法で「13+4√2」や「11+4√2」なども折り出せます。