Illustratorの機能を、それぞれ折り図ではどう使えるかをまとめておくと便利なのではないだろうか。日頃使っていない機能も見直す事で、便利に使えそうな発見もありそう。
ということで、とりあえず思いついたものを書いておきます。備忘録的にたまに増える予定。また当たり前すぎる機能は省いています。
重要度は、折り図の「図」を描くとき使う頻度の評価で独断でつけています。★5は常に使う機能、★1はほぼ使わない機能です。
- 重要度:★★★★★ = まず使い方を覚えるべき必須機能。
- 重要度:★★★★ =覚えておくといろいろと捗る便利機能。
- 重要度:★★★ =特定の作業で使うととても便利な機能。
- 重要度:★★ =条件次第では使うと便利なケースがある機能。
- 重要度:★ =折り図ではまず使わなさそうな機能。
メニュー
ファイル
「ドキュメントのカラーモード」
重要度:★★★★
基本的に、印刷で使うデータであれば「CMYK」、ウェブサイトなど画面での表示の場合は「RGB」を使う。特にカラーのデータであればまず最初に設定・確認しよう。
編集
「前面へペースト」、「背面へペースト」
重要度:★★★★★
選択したオブジェクトのすぐ前面・背面へペーストする。オブジェクトの重なりの調整に利用する。また、グループ化されたオブジェクトやクリッピングの内部に、オブジェクトを追加する場合にも使用する。
「カラーを編集/オブジェクトを再配色」
重要度:★★★
選択されたオブジェクトのカラーを編集する機能。まとめて色を変えるのはもちろん、リスト化されるので使われている色のチェックにも利用できる。ちなみにオブジェクトを選択していると、コントロールバーにも丸いパレット型のアイコンで出てくる。
「カラーを編集/グレースケールに変換」
重要度:★★★
選択されたオブジェクトのカラーをグレースケールにする。折り図集などモノクロ用のデータには、これを使っておくとよい。
オブジェクト
変形/個別に変形
重要度:★★★
複数のオブジェクトを同時に変形させる。座標の基準がそれぞれのオブジェクトの位置になるので、たとえば複数の手順の図などの大きさを変える場合は、こちらのほうが都合が良いことが多い。
変形/バウンディングボックスのリセット
重要度:★★★
バウンディングボックスの回転等の情報をリセットする。向きなどが操作しにくい場合に使う。直線などのシンプルなオブジェクトで、メニュー項目が実行できない場合は、メニューの「オブジェクト/シェイプ/シェイプを拡張」を実行する。
重ね順
重要度:★★★★★
オブジェクトの前後関係を移動させる。間に差し込むような場合は「前面へペースト」「背面へペースト」と使い分けると良い。
「グループ」「グループ解除」
重要度:★★★★★
複数のオブジェクトをまとめて選択や移動などの編集をしやすくする機能。1図ごとにグループ化しておくとレイアウトなどの作業がしやすい。また作図中も部位やパーツごとにグループ化しておくとよい。
なんというか、グループとクリッピングマスクを使えるようになれば折り図初心者卒業という感じ。使いこなせば中級。
「ロック」「すべてをロック解除」
重要度:★★★★★
特定のオブジェクトを選択されないようにする。基本的には編集したくないオブジェクトをロックする。なお、選択できないようにするだけで実は編集自体は実行可能な状態なので、グループ関連の操作など何らかの形で選択状態になるといろいろな編集ができてしまう場合がある。注意。
「隠す」「すべてを表示」
重要度:★★★★★
特定のオブジェクトを非表示状態にする。「ロック」と併用・使い分けるとよい。
「パス/アンカーポイントの追加」
重要度:★★★
オブジェクトのそれぞれのポイントの中間点にポイントを追加する。直線等の2等分、4等分などの基準にも使える。
「シェイプ/シェイプに変換」
重要度:★★
直線、長方形、円など、オブジェクトを特殊な属性にする。カドを丸くするなどの機能が使えるようになる。また回転の角度も記憶され、バウンディングボックス等もそれに合わせた角度になる。シェイプの条件を満たしていないと適用されない。工程の図ではあまり使う機会がないが、注釈や拡大の枠などで使えるので、覚えておくとよい。
「シェイプ/シェイプを拡張」
重要度:★★
シェイプに変換を適用されたオブジェクトを通常のパスに変換する。通常パスにすることで「バウンディングボックスのリセット」が実行できるようになる。パスポイントの移動等を行いシェイプの条件を満たさなくなると、可逆性がなくなる。直線や長方形などのオブジェクトはデフォルトでシェイプになっている。
「ブレンド」
重要度:★★
パスオブジェクト同士を変形させるように中間となる形を作る。説明が難しいが、使ってみれば大体わかると思う。折り図ではほとんど使わないと思うが、昔はグラデーションとして使っていたらしい。変わったところではユニットの図の「同じものをxx個つくる」とかで使えるかも。
「クリッピングマスク/作成」
重要度:★★★★★
一番手前のオブジェクトの内側の範囲だけ描画表示されるようになる(手前のオブジェクトの形に切り抜く)。主に部分拡大などの図で使う。枠のオブジェクトは塗り・線の設定がなくなるので、境界線が必要な場合は事前に複製しておくとよい。
拡大図の描き方の方法は、パスを拡大枠の形に合わせて整形する、周りを白いオブジェクトで隠すなどあるが、作業しやすさやデータの直しやすさを考えるならクリッピングマスクがおそらくベスト。
「複合パス」
重要度:★★
複数のパスを1つのオブジェクトとするような機能。ドーナツ型のような穴のあいた形を作るときなどに使う。おそらく折り図ではあまり使わない機能。「折り図で使う」とは少し違うが、EPS等で他のソフトからの読み込みを行ったデータは、複合パス化されている場合がある。注意。
書式
選択
「共通/アピアランス」
重要度:★★★★
塗り、線のアピアランス設定が選択オブジェクトと完全一致するオブジェクトを選択状態にする。特に山折り線・谷折り線などの鎖線を一括で選択する場合に使える。
※「共通/塗りと線」では、線幅・色などは参照されるが、破線は参照されないので、山谷の線が同じ幅の場合まとめて選択されてしまう。
「オブジェクト/孤立点」
重要度:★★★
ポイント数1の点状のオブジェクトを選択する。読み込んだデータや、編集時の消し忘れ等で発生する。印刷には出ない、基本的にはいらないオブジェクトなので、定期的に削除するとよい。注意点として、塗り・線のない透明なテキストオブジェクトも選択される。機会はあまりないが覚えておくと良い。
「オブジェクトを一括選択」
重要度:★★★★
同じ形状のオブジェクトを選択状態にして、その全部を同時に変更できる。形の修正やポイントの追加・削除はもちろん、前面/背面にペーストでオブジェクト追加も可能。(折り筋線や折った形など)なんとグループに対しても適用可能なので、パーツごとにグループ化をしておくと、修正作業が楽になるかもしれない。選択範囲については、シフト+クリックで外すことができる。もしくは変更しない部分を事前にロックしておくとよい。また、クリッピングパス内のオブジェクトを参照するとうまく機能しないので、複製してクリッピングを解除して操作するとよい。
効果
基本的に折り図ではあまり使わない機能なので割愛。面白いし便利な局面もあるけれど、使う必然性はあまりないはず。
表示
アウトライン/プレビュー
重要度:★★★★
オブジェクトの輪郭線のみを描画する状態に切り替える。後ろ側にあるオブジェクトの操作や、カドなどのポイントが一致しているかの確認などに便利。また、変形操作中に変形前の形状も描画されるので、折り図では便利な場合が案外多い。また、選択・編集では選択中のオブジェクトではなく前面のオブジェクトが優先されるので注意。
「ズームイン」「ズームアウト」
重要度:★★★★★
表示を拡大・縮小する。ショートカットはコマンド「+」とコマンド「-」。「ズームツール」より早いので利用しよう。
「バウンディングボックスを表示/隠す」
重要度:★★★★
選択されたオブジェクトに対して、各種変形ができる長方形の枠を表示する。便利ではあるが使う場合は暴発に注意。図を描く段階や、修正ではoffにした方が作業しやすいと思う。特殊な利用方法としては、選択範囲の確認に使える。具体的には、EPSなど他の形式から読み込んだデータには妙な複合パスが含まれる場合もあるので、そういった例外のチェックができる。
「スマートガイド」
重要度:★★★★
オブジェクト等にスナップさせることができるようになる機能。便利ではあるけれど、妙なところに引っ張られる場合もある。必要に応じてON/OFFを切り替えると使いやすい。
「グリッドを表示」「グリッドにスナップ」
重要度:★★★
「設定」で指定したグリッドを表示・スナップを有効にする。蛇腹作品等の序盤では便利だと思う。拡大・縮小を行うと間隔が合わなくなるので、中盤以降は使いにくい場合が多い。
「ポイントにスナップ」
重要度:★★★★★
カーソルを近くの有効なポイントに合わせる。カドなどをのオブジェクトのポイントを同じ位置に合わせるのに使う。基本的に有効な状態にしておいて、細かい操作など必要ない時だけ無効にするのが使いやすいと思う。
ウインドウ
ツールバー
「選択ツール」
重要度:★★★★★
黒い矢印。オブジェクトを選択する時に使う。アンカーポイントの選択・編集はダイレクト選択ツールを使う。選択部分をダブルクリックすると一つ下の階層を選択・編集モードになる。割と便利。
「ダイレクト選択ツール」
重要度:★★★★★
白い矢印。グループやマスク内のオブジェクトや、アンカーポイントなどを選択・編集する時に使う。Optionキーを押すと「グループ選択ツール」となり、オブジェクト全体が選択される。塗りの部分をクリックした場合も同様。「グループ選択ツール」で選択されたオブジェクトを再度クリックすると、上位の階層が選択状態になる。
「なげなわツール」
重要度:★★★★
囲った部分が選択状態になる、長方形でないダイレクト選択ツール。矩形では選択しにくい場合に使う。操作自体は矩形選択の方が早いので、使い分けるとよい。PDFを読み込んだデータなど、グループ化がされていないデータを、図ごとにグループ化する時にも便利。
「ペンツール」
重要度:★★★★★
アンカーポイントの作成や編集、削除等に使う。
「曲線ツール」
重要度:★★★
曲線を描くのに特化したペンツールと考えてよさそう。折り図は基本的に直線で描かれるので使う機会は少ないだろう。
図の順番を示す帯を描くのには便利。
「長方形ツール」
重要度:★★★★★
言うまでもなく長方形を描くのに使う。シフトキーを押しながら正方形が描ける。クリックで数値入力もできる。最初の形としてまずこのツールを使う人も多いだろう。
「直線ツール」
重要度:★★★★★
名前通り直線を描くときに使う。ペンツールでポイントを2つ描く方法もあるが、直線を描くということに限ればこちらが圧倒的に早く描ける。折り図では直線を描く機会が多いので、最もよく使う機能の一つとなるだろう。
ちなみにバージョン10で追加された機能で、それより前はペンツール等を使うので少し面倒だった。このあたりの機能の有無がFreeHandが折り図に向いていると言われていた理由なのかもしれない。
「円弧ツール」
重要度:★
ペンツールや曲線ツールがあるので、あまり使う機会はなさそう。
「スパイラルツール」
重要度:★
螺旋を作成する。折り図で使う機会はほとんどなさそう。……巻くように折る時くらいか?
「長方形グリッドツール」
重要度:★
長方形と縦横を等分したオブジェクトを作成する。蛇腹などの折り筋を描くのに使える局面があるかもしれない
「同心円グリッドツール」
重要度:★
放射状の線と、一定間隔の同心円を作成する。角度の基準用に使えるかもしれない。
「自由変形ツール」
重要度:★★★★
回転、拡大縮小など一通りの変形ができるツール。ショートカットは「E」。バウンディングボックスと似ているが、できることが少し違う。紛らわしい。基本的にはこっちが上位互換なので、「バウンディングボックス」を使うよりはこっちを使う方が便利だと思う。辺の真ん中の操作点を使った拡大縮小+シアーは特に便利。
「シェイプ形成ツール」
重要度:★★★
選択されたパスの外形線を使って、パスファインダのような操作ができるツール。データの状態が編集しにくく折り図向きではないが、完成図など編集が必要でない図であれば便利そう。またユニットの完成図などの「たとう」系の形などでも使える。展開図から必要な面の形を作る場合にも使えそう。
「消しゴムツール」
重要度:★★
ペイントソフトのように選択されたパスの一部を消すツール。直線に使った場合にベジェ曲線のハンドルが生えるので、折り図作業では使いにくい。
「はさみツール」
重要度:★★★
選択されたパスを切る。線は問題ないとして、塗りのあるオブジェクトはオープンパスになるので、少し使いずらい。
「ナイフツール」
重要度:★★★
はさみツールのとは違い、面積のあるパスを切るツール。線は切れない。結果はクローズパスになる。オプションを押しながらだと直線で切ることができる。折り図で使うのはこっちだろう。直線も一緒に切ることができるツールが欲しい。
「はさみツール」・「ナイフツール」は、ポイントを消去や選択→deleteキーが競合機能となる。どっちを使うかは好み。
「スポイドツール」
重要度:★★★★
他のオブジェクトから塗り・線などの情報をコピーするツール。便利ではあるが、同じ設定を何十回も使う折り図作業ではグラフィックスタイルを使う方が良い。
「ものさしツール」
重要度:★★★
2点の距離や角度などを得るツール。結果は情報パネルに表示される。
「手のひらツール」
重要度:★★★★★
表示部分をドラッグでずらすように動かす。スペースキーを押している間はこのツールに切り替わるので、実はツールとしてはあまり使わないと思う。なお、スペースキーの利用で便利なのは、なにより元のツールに切り替え直さなくてもよいことだと思う。
「ズームツール」
重要度:★★★★
表示を拡大・縮小する。メニューの「ズームイン」「ズームアウト」をショートカットで起動させる方が早い場合が多い。もしくは⌘+スペースでの一時的な切り替えも便利。
パネル
アクション
重要度:★★★★
よく使う操作を登録して、実行できる。ショートカットキーの割り当ても可能。登録したグラフィックスタイルの割り当て、拡大縮小、45度・22.5度の回転などがおすすめ。他、1.41421倍が割と便利。
グラフィックスタイル
重要度:★★★★★
塗り・線などを登録・適用する。便利。山谷線や用紙面など、とりあえず複数回使う設定は登録して、活用すると良い。理想は使うものを全て登録して、それ以外は使わない状態。
ちなみに、何かの拍子によく増える。管理しにくいので、スタイルの変更等を行う場合は「共通/アピアランス」も使うとよい。
シンボル
重要度:★★★★
記号などを登録しておくと便利。繰り返しのパターンの多い展開図等でも使える。シンボル内オブジェクトへのスナップが可能なので、個別変更がされないことを利用して、展開図等を登録して補助的なテンプレートして使うこともできそう。
なおシンボルオブジェクトのサイズは線の太さも含めたものになるので、数値入力で大きさを指定する場合は注意。対策としては大きさの変更は%で指定するとよい。
パスファインダー
「アウトライン」
重要度:★★★
パスが交差している点でバラバラのオブジェクトにする、言い換えると交点にポイントができる。線の設定などは消えてしまうので、適当な色をつけ直そう。展開図等にこの機能を使ってテンプレートとして利用できる。また複製して機能を適用、テンプレートとして使用も覚えておくと割と便利。
属性
「中心点を隠す」、「中心点を表示」
重要度:★★★
オブジェクトの中心点の操作ポイントの表示・非表示の切り替え。基本的には非表示の方が、意図しない選択などが発生しにくいのでお勧め。例外は重要な点を示す○印で、中心点を表示させておく事で折り線の起点などにスナップさせることができる。また正方形などの中心にスナップさせたい場合にも使える。一時的に表示させておくとよい。
直線の場合は(当たり前だが)中間点にポイントが表示されるので、半分の幅を出したい時などに利用できる。
「メモ」
重要度:★★★
オブジェクトに任意のテキスト情報を付加する。アクションやスクリプトから参照できるので、「手順番号」や「裏返し記号」などと入れておけばアクションと組み合わせて検索・一括選択ができる。
変形
重要度:★★★★★
基本的にはメニューの「変形」の表示替えのような感じ。座標と大きさなどは数値入力ができるので、サイズのコピペや演算子も含めて使うと便利。また「シェイプ」の情報もここに表示される。
「水平方向に反転」「垂直方向に反転」
重要度:★★★★★
選択したオブジェクトを左右・上下反転する。角度は限られるものの、「リフレクトツール」に切り替えて軸を設定するよりも圧倒的に早い。よく使うので「アクション」等を利用してショートカットを設定しておくとよい。
透明
「比較(暗)、乗算」
重要度:★★★★
沈める部分など、一部分を濃くする時に使う。比較(暗)と乗算のどちらを使うかは好み。個人的には比較(暗)が使いやすいと思うが、計算の方法と結果が違うので、自分の図にあったものを使うと良い。
線
「線端」
重要度:★★★★★
山谷等の破線は「線端なし」が見やすいと思う。用紙の輪郭の描き足しなどでは、下記の「カドの形状」に合わせて「丸型線端」がよい。
「角の形状」
重要度:★★★★★
用紙の輪郭線では、ラウンド結合を使用するとよい。マイター結合だと鋭角なカドが外側に尖るので、カドが集まる部分等で飛び出してトゲトゲになってしまう。
情報
重要度:★★★
選択されているオブジェクト等の色やサイズなどが表示される。また、物差しツールの結果が表示される。
その他
ドラッグ操作中等のキー入力
重要度:★★★★★
機能が切り替わったり、角度の固定など、様々な効果がある。よく使うものから覚えておくとよい。
例えばシフトキーであれば、移動の角度等が45度刻みになる。選択ツールでは、水平・垂直に移動、直線ツールであれば水平垂直等の線が描ける。長方形ツールで正方形を描くときにも使う。
オプションキーの場合は、選択ツールではオブジェクトの複製ができる。描画系のツールでは、ドラッグの起点が新規オブジェクトの中心になる。
パネル等の数値入力には基本的な演算子が使える。
重要度:★★★★
例えば「元の数値/3」などができる。大きさや長さの等分、角度の指定などに便利。使えるのは、恐らく四則計算「+」「-」「*」「/」のみ。また残念ながら複数の演算子を同時には使えないようだ(「元の数値/3*2」など)。なおFreeHandは使えた。FHの謎高機能の一つ。