指等を折り出すためにヒダを作る構造。よく利用されているお馴染みのものだが、実はヒダの幅は等分でなくてもよい。それどころか恐ろしく自由度が高い。
下図は√2:1に分けた例。22.5度系で便利な局面がわりとある。(ユニコーン2.0)
2以上のヒダにすることも可能。下の例は幅4:3:2:1のもの。
指等のカドの折り出しの他にも、模様として使うことも可能。(例:アルドゥインの首の部分)
良い機会なので整理。
以下詳しく。
折り図を見て折る際の「難しさ」はいくつかの要素に分けることができる。
(1)作品の複雑さ
(2)手順の難度(折りやすさ)
(3)折り図の分かりやすさ
はそれぞれ別の要素で、全部合わせて折る時の「難しさ」になる。
(1)「作品の複雑さ」は手順等ではなく作品自体の複雑さ。複雑な作品が難しいとは限らないが、折り図の長さについては大抵は比例する。 「難しさ」をアピールするならこれを前面に出すのが多分正解。というか他の二つの難しさはあまり褒め言葉にならない。
(2)「手順の難度」は「折りやすさ」や「折る楽しさ」に直結する。また、講習等で教える場合でも重要。本当に重要なのだけれど、そもそも比較する機会がほとんどないこともあり、あまり認識されていないように思う。なるべく幅広い手順を比較検討してよりよいものを選びたい。
展開図で折るのが難しかった作品が、折り図ではスムーズに折れたというような場合、この折りやすい手順が工夫されていると考えてよい。 個人的な具体例を挙げると小松さんのカバで、山谷なしの展開図折りは難しかった。折り図の手順側については実際折った人なら説明は不要だろう。
(3)「折り図の分かりやすさ」は折り図自体の見やすさや、重なりなどの表現の分かりやすさ。 省エネ折り図の場合でも、正確に折るために最低限の情報は描く必要があると思う。基準は難しいけれど、「何を(what)」「どこに(where)」「どうやって(how)」 折るかは明確であってほしい。
例:「手前のカドを(what)すぐ後ろの隙間で(where)中わり折り(how)」を図なりネームなりで表す。
折り図というのはとにかく手間と時間がかかる。個人的には(3)は場合によっては手を抜いてもいいけれど、(2)はしっかり行うべきであると考えている。折り手順は折り紙屋にしかできない仕事であり責任です。大切なことなので何度でも言おう。手順は重要。
(3)はどこまで手間をかけるかの問題だけれど、基本的には想定する対象者のレベル(折り図読解力とでもいうのかな)に合わせることになる。簡単な作品や一般向けの折り図は丁寧に分かりやすく、たとえば内輪や自分用の記録のような対象が限定される場合であれば最低限でもいいのかもしれない。
最後に。どんな折り図であっても、まず折り図が描かれている時点で、その事自体は評価したい。多少わかりにくい折り図であっても、有ると無いとでは大違いのはず。(ない方がマシという酷い折り図はそうそうない。)
タイトル以上に説明することがないけど一応。
折り紙で題材の大きさを表現するのはなかなか難しいのですが、作品の一部分を細かく折ることで、相対的に作品全体が大きく見えます。具体的には「目」を小さく折り出すのが分かりやすくておすすめです。
逆に小型の動物等の場合に、目を大きめに折り出すのが有効です。
頼んでもいないのにたくさん届く迷惑メール。フィルタとタイトルで判断してゴミ箱行きなのだけれど、つい中身を覗きたくなってしまうものもあります。目に止まってしまった秀逸(?)なタイトルのものをいくつか。
折り紙者にとって大変紛らわしいタイトル。ちょっと面白かったので今日の一言のネタにしました。 ちなみに本文は「心が折れました以下略」の出会い系サイトスパム。
一般的にはヒューズボックスなんだけど、折り紙やってる人なら布施ボックスって読むよね。本文は、「manufacturer in China以下略」。余談ですが英語圏の折り紙ジョークで「トモコ・ヒューズの作品が好きなコンベンション初参加者」というのがあるらしい。
内容はよくあるスパムなのだけれど、タイトルがそのまましずめ折り。
過去一番の力作?は、 「《※千羽の力が急接近中!!》ソナタは運命の「人」運命の「力」運命の「星」の元に生まれた黄金の千羽の力を解放させる事の出来る選ばれし人間。さぁ、今こそ、真実の千羽鶴物語を覗くがいい。」 という長い”タイトル”の迷惑メール。千羽鶴物語ってなにそれ面白そう。
せっかくなので検索をしてみたら、なんと別バージョンがあるらしい。 http://nanndemo-ittyae.seesaa.net/article/403196244.html
「§真実の千羽鶴物語§悲劇は二度と繰り返してはいけません。貴方は千羽の力を持つ人類の救世主。幼き少女を一刻も早く見つけ出し、ソナタの手で今行動すれば100%確実に救い出す事が出来る命をソナタの愛で助けてあげるのです!今こそ千の想いを一つにするのです!」
……なんとなくあらすじは分かった気がする。
分かりやすい折り図とはどのようなものだろうか?
ということで、基本的な中わり折りの手順を例にして、紙の重なりの表現について少し説明してみます。
この中わり折りの説明図を分かりにくいと感じる人はあまりいないのではないでしょうか。簡単な図ですが、手順を表現するために紙のずらし方などいろいろな工夫がされています。
こんな感じです。「その手順で何をするか」と「前の手順の結果」を、紙の重なりで見せるようにしています。
逆方向にずらした図と比べると、「分かりやすさ」が分かりやすいですね。紙の重なりが分かるように図を描くのはとても重要です。
ずらし無しはこうなります。形だけでは、中わり折りか後ろに折るのかが分かりません。少し出ている谷折り線と、矢印の形でようやく中わり折りと判断できます。
もう一つ、中わり折りできる隙間が複数ある場合などは、特に重なりを描くことが大切です。「手前の隙間で中わり折り」など、ネームで説明することもできますが、ぶっちゃけネームは読んでもらえないことが多いので、できるだけ図の方で表現したほうが良いです。
紙の重なりの表現は、手間はかかりますが適切に描けば折り図がとても分かりやすくなります。繰り返しとなりますが、「前の手順の結果」と「その手順で何をするか」が表現できているかを意識して作図するとよいでしょう。
ネタ系作品でよく「思いついてしまった」という表現を使っていますが、これは揶揄とかではなく本当に文字通りの意味で、創作しようと考えていなくても、「折れる」と思いついてしまうことがあるのです。
いってしまうと一種の職業病なのですが、どうも私は、見ているものに対して「折り紙で折ったらどうなるか?」ということを常に頭の片隅で考えているようなのです。そしてたまに、意識していなくても勝手に構造等を思いついてしまう。できそうだとわかったら、確認してみないとすっきりしないので、実際に折ってみる。その結果が「思いついてしまった」作品になります。
ちなみに、上手くいってもダメでも、結果が分かった段階で満足してしまう事が多いので、確認のためだけに折った折りゴミの方もたくさんあります。
展開図折りについて、個人的に効果的なのでは?と思う練習方法で、なんとなく考えていた事を少し整理したものです。実際に効果があるかどうかは不明、といってしまうと身も蓋もないですが、少なくとも私は(いつの間にか)できるようになったという実績があります。 実際に試して見るのはもちろん、話のネタなどにご利用ください。
以下詳細。
そもそも、展開図は基本的な構造を伝えるための図であり、折り方を説明する図ではありません。 折り図と展開図を強引にたとえるなら、詳しい道案内にそって目的地に向かうのと、住所だけ渡されるくらいの差があります。つまり展開図折りでは、目的地の位置の確認・交通手段の選択、道順など、……言い換えると、どのように折り筋をつけるのか、またどのように折り畳んでいくのかなどを、折り手が考えなければいけないのです。また、展開図によっては、そもそも手順にできないケースもあり、展開図折りで手順に頼るのは限界があります。 と言うことで強引にまとめると、「手順に依存しない折り畳み」が、展開図折りに必要な技術なのです。
ではこれらはどうやって身につければ良いのでしょうか? 折り図を見ながら折るだけでも身につけられる部分はありますが、よほど意識して学ばない限りそれだけでは十分とは言えません。
そこで練習方法の提案として、いきなり展開図までジャンプせずに、まずは折り図で折ったものを利用して、そこから一歩進んで鍛えるのはどうでしょうか? 折り図からいきなり展開図から折ろうとするところに無理があるのです。折り図と展開図の中間を埋めて、少しづつ出来ることを増やそう。
具体的な練習方法として、まず折り図を見て折ったものを、すべて広げて正方形までもどして、それをもう一度畳んでみましょう。当然ですが、この時には折り図を見てはいけません。むしろ折り図の手順は頑張って忘れてください。なるべく手元の紙だけを使って行います。これは「折り線がついている状態から折り畳む」練習とでも言えばいいのでしょうか。鍛えられる事は、問題の「手順に依存しない折り畳み」はもちろんですが、それ以外にも
などが挙げられます。どれも、展開図折りには必要不可欠なスキルです。
次に、広げた作品を元にして展開図を描いてみましょう。折りたたみに必要な線・使わない線の見分けや、構造や作品自体への理解はもちろん、なによりも実際に展開図を描いてみることで、展開図に関するほぼすべての事への理解が深まります。 方法は、広げたり畳んだりしている紙に書き込んでいくのがよいでしょう。折り線の凹凸があるので、サインペンなどが使いやすくおすすめです。赤黒2色で山谷を区別するなど工夫してみましょう。
最後に、上記の広げたり折りたたんだりした作品を、その現物と描き起こした展開図のみをつかって複製します。折り出しの方法や、線をつける順番などを考えて行わなければいけません。また、次の折り畳む段階でも、一度折りたたまれている紙と、そうでない紙では感覚や難度がけっこう違うものです。
これをなるべく多くの作品で行います。出来れば折り方をよく覚えていない、少し前に折ったものを使うとより効果的だと思います。また、コンベンションなどの教室で教わった作品など、折り図の存在しない作品の複製で行うのも緊張感があってよいでしょう。
なおこの方法は恐らく近道ではありません。しかしどんな作品にでも対応できる展開図折りの基礎体力をつけることができる……はずです。自分以外の事例を知らないので、効果は保証できないけれど、実際に行った人間が言うのだから、きっと大間違いではないと思います。
さらに、これらの練習で得られる技術や経験は、創作する時に役立つものばかりです。創作をするのに展開図折りが出来る事は必須ではありませんが、複雑な作品を創作したいのであれば、展開図に慣れておく事は決して無駄にはならないはずです。
タイトル:「ゲーミング-α」
創作・制作:神谷哲史
2020/07創作
七色に輝くゲーミング折り紙があったら面白いのではという馬鹿話から、現実的なのはユニット作品で、シンプルな黒い立体のすき間に色が見えるようなものでどうだろうか?と考え創作。ネタ作品のはずだったのに割と出来が良い。
構造はシンプルなのでほぼ同じ作例があるかもしれません。ただ、もし前例があっても隙間はないと思う。いわゆる薗部ユニットよりも一回り大きくなります。作例は黒い折り紙の裏側にマーカーで色をつけています。ネタ抜きで折るなら、赤茶色等のレンガをイメージした色で折ると一般受けするのではないでしょうか。
折り筋を変えて向きを変えたものが「ゲーミングβ」の予定。
折り紙とはあまり関係ない話。
「鶏肋」という故事成語があります。鶏肋とは要するに鶏ガラのことで、煮込めば良い出汁が出るが腹は膨れない。捨てるには惜しいがあまり役に立たないものを指す言葉です。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%B6%8F%E8%82%8B
次に正方形を切り出した後に残る、細長い紙の切れ端。そのまま捨てるには惜しい気もするが、十分な大きさの正方形は切り出せない。まさに鶏肋ではないでしょうか。 そのようなわけで、私はこの切れ端を鶏肋と呼び惜しみつつもの処分をしています。
さて、タイトルの言葉「このユニット作品は鶏がらスープである」に戻ります。 折り紙では、時に鶏肉ではなく鶏がらスープが欲しい時もあるのです。細長い用紙を利用して折るユニット作品。これこそが鶏肋から作った鶏がらスープなのです。 私が教室の残りの鶏がらとか言い出した時は、紙の切れ端を利用して作品を作ったと考えていただければ幸いです。
折紙探偵団マガジン181号にカモシカの折り図が掲載されました。作品と折り図の解説を簡単に箇条書きで。