「 未分類 」一覧

暫を折ってみた

外が暑すぎるので、外出は控えて『北條高史折り紙作品集』より暫を折ってみました。

http://www.origamihouse.jp/book/original/hojyo/hojyo.html

用紙は昔伊東屋で買ったロール和紙90cmを使用。ただ細部の余裕や折りやすさを考えると、120cmくらいが適正サイズなのかも。厚みは折り手の技量と好み次第ではあるものの、サイズと合わせて余裕をもった厚さ(薄さ)がよいでしょう。

構造や複雑さの都合上仕方がないとはいえ、綺麗に折るのが難しい手順だと感じました。特に引き出すような手順の後は、カドを揃えるなどの補正作業をまめに行うとよい……というか行いました。

仕上げは個人的な好みで、旧版と混ぜています。それにしても当時は複雑な作品だと感じましたが、今見るとわりと普通に見えるのは、ここ20年くらい創作技術の進化と複雑さのインフレの結果なのでしょうか。まあ私が言うのもなんですが……

https://hojyo.origami.jp/109shibaraku.html

折り図以外だと、折紙探偵団マガジン59号に掲載されている創作記事はできれば読んでおくと良いでしょう。作品や作者の意図の理解は、仕上げに役立つはずです。今ならおりがみはうす店頭の折紙探偵団マガジンバラ売りで入手可能。

https://origami.jp/magazine/59/

あとは上記の記事でも書かれていますが、モデルとなった浅草寺の暫像が参考になります。各パーツを比べてみると、形の意味を理解しやすくなるのではないでしょうか。

ところで日本橋の麒麟像もそうなのだけど、これは一種の聖地なのだろうか。

https://www.google.com/maps/place//@35.7158251,139.7961999,20z


VellumCADとViaCad

折り図を描くときには、Adobe IllustratorやAffinity Designerなどのドローソフトが使われます。では展開図はどうなのでしょうか?

ドローソフトで展開図も描けるのですが、機能や精度等に限界があります。そこで製図等に使われるCadソフトや、最近ならoripaやorihimeなどが便利です。

※「oripa」:https://mitani.cs.tsukuba.ac.jp/oripa/

※「orihime」目黒さんのサイト:http://mt777.html.xdomain.jp/

私の場合は、展開図などを描くときにはViaCadを使っています。

https://www.punchcad.com/punch-viacad-2d

日本語版もないのになぜ? と思われるかもしれませんが、理由は少し長くなり2000年ごろまで遡ります。

展開図はFreeHandで描いていたのですが、スナップ機能や精度等に機能的な限界を感じていました。Cadソフトが便利らしいという事は聞いていたのですが、当時はMacOSで動くまともなCadソフトはそう多くありませんでした。

そのなかで見つけたのが「MacVellum」です。実売価格2万円程度(たしか)とCadソフトとしては比較的安価で、機能的にも十二分のようです。決定的だったのは、試用版をダウンロードしてのテストが非常に良かったということです。試しに複雑な展開図を実際に描いてみると、使い込んだFreeHandより早く描くことができました。

そういうことでしばらくは「MacVellum」を愛用していたのですが、2007年ごろにMacOSのバージョンが上がり、旧OSのソフトが使えなくなりました。開発・販売会社の倒産等によりよくわからない状態になっていたのですが、後継ソフトの一つ「DraftBoard」がファイルの引き継ぎなど良さそうです。というわけで「MacVellum」と比べると少々高めではあったものの(たしか4万円くらい)Cadソフトとしてはそんなものなので「DraftBoard」を導入。

※「vellum」関連の判例。本当にいろいろとあったらしい。

http://www.translan.com/jucc/precedent-2010-03-31.html

そしてさらに数年後、いわゆるIntelMacへの対応のため、再度ソフトウェアの更新が必要になりました。候補はいくつかあったのですが、VellumCad系の「ViaCad」を発見。残念ながら英語版のみとなりますが、2D版は$39とかなり安かった(当時)のでダメ元で導入。細かい操作感の違いや荒い挙動はあるものの、基本的な機能は同じということもあり普通に使えるようになりました。なお言語の違いも同じ理由ですぐに慣れた。

ちなみにVellumCad系のソフトの特徴として、ドラフティングアシスタントという非常に強力なガイド機能があります。大雑把に言えば線の起点や交点等から一時的に水平・垂直……それどころか設定次第では22.5度などのガイドも出せるというような機能なのですが、これが展開図を描く作業と非常に相性がよく、操作感なども含めて展開図を描くためにあるような機能なのです。

上の画像のように、いきなり22.5度を基準とした線が描けるのは強い。グレーの線がドラフティングアシスタントのガイド。実は少々作りの荒いところがあり、たとえば画像では小数点以下の角度は表示されていないのですが、ちゃんと正しい角度でスナップしています。

現在、oripaやorihimeなどの折り紙の展開図を描く専用ソフトなどもあり、2000年代の状況とは違いわざわさCadソフトを使う強い理由はあまりありません。ただ、私個人としては、創作中に構造を整理しながら補助線や円領域などを書き込んだ状態の展開図を描く作業や、そのなかで生まれるアイディアもあること、また折り図用のテンプレート的なものの用意などにも使っているので、当面はViaCadを使おうと考えています。


TVチャンピオン カレンダー決勝の話

2003年のTVチャンピオンで製作した作品の写真が出てきたので、当時の話を少し。

決勝テーマは、折り紙メーカートーヨーさんのカレンダー。優勝作品が採用され、3ヶ月ずつ、4枚分の作品を用意するというものです。単純な発想としてとりあえず四季をテーマにすることを思い浮かべますが、意外性のかけらもなく、なにより題材被りもありそうなので、もう少しひねった案を考えました。

まず思いついたのは、ちょうどライトフライヤー飛行テストより100周年ということで、飛行機の歴史を辿るというようなものです。時代とイメージの違う、ライトフライヤー、飛行船、航空機、スペースシャトルかロケットという感じで4場面にまとめるという感じです。題材としては悪くはないし、うまくできれば見栄えもしそうです。ということで実際にできるかどうか少し考えてみたのですが、ライトフライヤーとか形になるのか?という問題もあり、もう少し別のものも考えてみます。

歴史を辿るというまとめ方は良さそうなので、テーマをずらしてはどうだろうか?ということで考えてみたのが、比較的得意な分野?の生命の歴史です。毎回のことですが、TVチャンピオンでは一定の期間内にある程度以上のクオリティの作品を用意しなければいけないので、ある程度見通しの立てやすい、経験のある題材等を選ぶのは大切です。

とはいえあまりにもそのままでは面白さがないので、最初の四季と組み合わせたらどうなるか……バージェスおせちというバカネタを思いついてしまったので、生命の歴史×季節で決定しました。二つの違う時間軸を重ねて表現するというのは、今回のカレンダーという決勝テーマにも合った内容です。タイトルも「5億7500万分の1年」という、割とそれっぽいものになりました。

次に決めるのはどの生物をどのようにこじつけて折るかということになります。とりあえずバージェス動物のカンブリア紀は確定として、他は雑に古生代中期くらい、中生代、新生代としてみます。つまりバージェス、原始的な魚など、恐竜、絶滅哺乳類です。

最初の1〜3月は、思いつきそのままでバージェスおせち。点数が多いけれど色さえ合わせればどうにかなりそうです。アノマノカリスを海老に見立て(学名の意味も「奇妙なエビ」だし)中心にドンと置き、あとはそれっぽい形の生き物をそれっぽい色と形に創ります。結果的に一見おせちだがよくみるとゲテモノという大変楽しいものが完成しました。

4〜6月、時代的にウミサソリとか考えてはみたけれど、季節とのこじつけが難しいく使いどころがないのでボツとなりました。代わりにこどもの日から連想して、作品の種類が少なくて済みそうなダンクルオステウスのぼりになった。吹き流しのオウムガイが個人的には好きなネタ。

7〜9月、これは悩んだけれど、時間的な問題もあり、すでにある作品をベースにしてバロサウルスのお月見にしました。ジオラマの構造的に背景がないので月をどうするかという問題があったのですが、水面に映すという会心のアイディアで解決。細かいネタですが実は月の模様も恐竜になっています。

最後の10〜12月は、クリスマスをネタにして、わかりやすく派手にマンモス&古代人サンタに決定。折る作品数も少なくて済みそうです。

題材決定で気をつけたのは、なにより4面のイメージが被らないようにということです。レイアウトや使う紙の色など、なるべくわかりやすく変えるようにしています。また、実は使用する紙の傾向も4面で変えています。それぞれホイル紙、洋紙ドライ、洋紙ウェット、和紙をメインに使っています。

当日、実際に折る際には時間との勝負となりました。実際に12時間で4面を埋める作品を折るのは、過去最も時間的にきつい内容です。なんにせよ絶対的な時間が不足しているので、一つ一つの作品を大き目に折って場を埋めるようにします。これは単純に面積だけでなく、高さも出せるので見栄えもするようになります。メインとなる作品を大きめに作ると、良い意味でのケレン味というか、ボリュームがわかりやすくなります。これについては過去の経験が役に立ちました。また、短い時間で折れる小物を多めに用意すると、手間の割に密度が高く見えるようになります。こいのぼりの波・三角錐の木などがわかりやすいでしょうか。メインとなる題材が複雑な作品であれば、解像度の差から主題がわかりやすくなるという効果もあるかもしれません。

今後TVチャンピオンのような企画があるかはわかりませんが、創作側の内容はともかく、制作関連については例えばジオラマ系の展示でも応用できるのではないでしょうか。

関連:TVチャンピオンの話(https://www.folders.jp/uc/2018/495/


創作における「選択肢と確率」

そもそも創作って何をしているのか?

  • まず「折り紙の創作とは無数の選択肢から最良と思われるものを選び進める作業である」と仮定する。
  • もう一つ、「良い選択肢を見つけられるかは、確率である」と仮定してみると、割といろいろなことが説明できる。
  • 知識や経験は選べる選択肢の広さや質。良い選択肢を選べる確率が上がる。
  • いわゆる「折り紙設計」は、制限を加えて選択肢を選びやすくする方法。
  • 理屈上では、確率は低いものの、いきなり傑作を創作できる可能性もある。
  • 選んだ選択肢が作品となり、作風やセンス・個性になる。
  • 「良い作品を創作するには確率を上げて試行回数を増やせ」。

それぞれ詳しく。

まず「折り紙の創作とは無数の選択肢から最良と思われるものを選び進める作業である」と仮定する。

折り紙の創作とはいったいなにをしているのか? もちろん自分の作りたい形を折り紙で表現するというのが創作なのですが、その時、具体的にどのような作業をしているのかというような話です。いろいろと考えていたのですが、私の場合は、「折り紙の創作とは、無数の選択肢から最良と思われるものを選び進める作業」というのが一番腑に落ちる言葉になりました。たくさんの選択肢から、ある程度先を読みつつ試作し、なるべく良さそうな選択肢を選びながら進める。手詰まりがあれば別の選択肢を模索する。「試行錯誤」の一言でも表現できてしまうのですが、その内容はこれではないかと思うのです。

https://www.folders.jp/t/shisaku.html

関連記事。なお元となったメモは2011年。考え始めたのはもっと前。

もう一つ、「良い選択肢を見つけられるかは、確率である」と仮定してみると、割といろいろなことが説明できる。

ただし、当たり前の話ですが、常に良い選択肢を見つけられるとは限りません。全てがうまく進む完璧な選択肢に出会えることはそうそうなく、多くの場合は出来ること・出来ないことのバランスをみながら妥協して「その時点で最良と思われるものを選ぶ」ことになります。この良い選択肢を見つけられるかは言ってしまうと運であり、うまくいく時はあっさりと見つかりますが、何十回と試行錯誤しても、今ひとつという選択肢しか見つからないケースもあります。一定の確率でとても良い選択肢が存在するはず(と信じたい)なのですが、何度ダイスを振っても目的の目がでないことはあるものです。これを「良い選択肢を見つけられるかは、確率である」と考えてみると、創作におけるいろいろなことが割とうまく説明できるようになります。少なくともなんとなく分かったような気にさせられる程度には、説得力がある解釈になります。

知識や経験は選べる選択肢の広さや質。良い選択肢を選べる確率が上がる。

一定の確率で当たりの選択肢が見つけられるのなら、重要なの確率をなるべくあげることです。ここで知識や経験が役にたちます。
そもそも、知らない技法を使った選択肢は選ぶことができないし、知っていたとしても初めて使うのであれば、その成功率は低いはずです。多くの作品や技法を学び、それを使えるようになることで、良い選択肢を見つけ、進められる確率は大きく上がります。
よく創作に慣れている人が、そこそこの作品を短時間で創ってしまうことがありますが、これは取れる選択肢が桁違いに多く、先を読む能力も高いので試行回数自体が少ないからだと説明できます。単純に当たりだけでなく大当たりの確率も違うと考えると、ダイスを振る回数に大きく差が出そうだいうことがわかるでしょう。なんというか俗な例えになりますが、創作作業ガチャを回すとき、初心者はSSRが0.001%くらい、Rでもやっと1%くらいなのに対し、創作に慣れている人はSSRが0.1%、Rが50%くらい。多分このくらいの差があります。

いわゆる「折り紙設計」は、制限を加えて選択肢を選びやすくする方法。

確率を上げる方法の一つに、ある程度整理・体系化されている創作方法(いわゆる「折り紙設計」)を使うというものがあります。
これを選択肢と確率という面から考えると、「ルールを設け選択肢を限定し、一定以上の質の選択肢を選びやすくする」ということになるでしょうか。うまく使えば、扱いにくい選択肢を除外して、試行回数を大幅に減らすことができます。また、基本形や定石的な構造なども、ある程度のところまではダイスを振らずに進める方法と考えられます。
見方を変えると、ルール外の選択肢を見落としやすくなるということにもなります。つまり外れは減るけれど、大当たりも減るのです。経験上、変則的な構造が最適解というケースは割と多いので、悪い意味でこだわり過ぎない方がよいかもしれません。なお、その変則的な構造もルールに含めることもある程度可能ではあるのですが、そうなると選択肢が多くなり過ぎて、扱いが難しくなります。(具体例:整数比角度系とか)

理屈上では、確率は低いものの、いきなり傑作を創作できる可能性もある。

気がついた方もいるかと思いますが、理屈の上では初めて創作する人が傑作を創る可能性もあります。少ない試行回数・低い確率でいきなり大当たりを引く可能性はゼロではありません。複雑な作品の場合はダイスを何十回も転がすことになるので、いきなり傑作というのはまずないでしょう。ただし、シンプルな作品であれば話は別で、数回のダイスで大当たりが続くことがあってもおかしくはありません。

選んだ選択肢が作品となり、作風やセンス・個性になる。

良い作品を創作するには、もう一つ重要なことがあります。「なにを基準に良い選択肢と判断するか」です。どれだけ選択肢を広げ確率を上げても、選ぶ基準がダメでは良い作品は生まれません。良い選択肢とはなにか、更にいえば良い折り紙作品とは、自分の作りたい形はなにかを考えることで、なぜその選択肢を選ぶかを決めることができるようになるのです。
最終的に選んだ選択肢が作品となり、作者の作風や個性・センスとなります。これは折り紙の技術だけではなく、題材等その他の知識や経験も影響してくるでしょう。
言い換えるならこれは創作中の作品への「批評」であり、多分今回の「選択肢と確率」とは別の、もう一つの創作において重要な話になりそうです。ちゃんと考えて出力すると多分このテキストと同じくらいのボリュームになる。

「良い作品を創作するには確率を上げて試行回数を増やせ」。

以上、創作作業を選択肢と確率として考えてみましたが、予想以上にいろいろなことを、それっぽく説明することができました。
最後にこの考え方から導き出される結論をまとめると、良い作品を創作するには「確率を上げて試行回数を増やせ」そして「作品について考え批評せよ」となります。結局王道はなく、当たり前の結論になるのです。
また、創作初心者・中級者は、基本形や定石的な構造を積極的に利用して、ハズレダイス率を減らしつつ経験値を上げるのが上達の近道なのかもしれません。創作も数をこなせば、ある程度までは上手くなるもので、これは実際辿った創作者も多いと思うし、実例も最低1件知っているので間違いではないはず。

余談となりますが、この考え方だと、よく言われる「創作をしたければ、自作多作含めてとにかくたくさん折れ」は実は根性論とかではなく、割と適切なアドバイスなのかもしれない。


リュウジンという競走馬

昔、面白い名前の馬がいるということで頂いた「リュウジン」という馬の単勝馬券。なんと勝ち馬券で、せっかくなのでそのままとっておいたものです。
https://db.netkeiba.com/race/200344090710/

「バハムート」の馬券も頂いたのですが、こちらは残念ながら4着。
https://db.netkeiba.com/race/200347091711/

ちなみに、北條高史さんの作品に関連して「コンゴウリキシオー」の話もよく出ていました。なかなか強い馬だったようですね。
https://db.netkeiba.com/horse/2002110159/

もう一つついでに競走馬でおそらく最も折り紙的な名前の「オリガミ」。
https://db.netkeiba.com/horse/ped/1999102383/

産駒も関連した名前が多くて面白い。個人的には「ヘンゲンジザイ」がナイスネーミングだと思う。
https://db.netkeiba.com/horse/mare/1999102383/


飛びたい人(通称はなのようせい)

翼が生えた人型の物体。創作時期は私が小学生のころ(一番古い記録は1992年だが、多分もう少し前)で、実は最初の創作作品候補の一つ。一応モデルはイカロスだったのだが、顔の鼻が目立つので「はなのようせい」とよばれていた。

基本構造、造形共によくある小学生が作った作品という感じで、1点を除き特筆すべきことはない。 本題はその1点の部分で、頭部となる内部カドを広げるように加工して顔の形と鼻となるカドを折り出している。これは吉野一生氏の虎の頭部と同じような構造であり、稚拙ではあるものの、当時の自分なりに内部カドの活用を考えた結果と言えるだろう。 ちなみに、この構造を見つけていた結果として、虎を見たときの感想が「実力がある人が使えば、同じような構造でもここまでかっこいい形ができるのか」という、おそらく他の人とは少し違うものになった。

一応、それなりに応用性もあり、内部カドの利用方法としては捨てたものではない。実際にサイクロプスなど他の作品で使用している。 発展させて顔なども試作したが、今のところ使う機会がない。


超難解作品と超難解折り図は別物である

良い機会なので整理。

  • 超難解作品と超難解折り図は別物。
  • 手順は重要。超重要。
  • 折り図にかける手間は折り図の対象によって決めると良いと思う。
  • 折り紙のパズル的な面白さを求めるならば、折り図ではなく展開図の方が向いているように思う。『季刊をる』での前川さんの綴じ込み展開図がとても良い例。

以下詳しく。

折り図を見て折る際の「難しさ」はいくつかの要素に分けることができる。
(1)作品の複雑さ
(2)手順の難度(折りやすさ)
(3)折り図の分かりやすさ
はそれぞれ別の要素で、全部合わせて折る時の「難しさ」になる。

(1)「作品の複雑さ」は手順等ではなく作品自体の複雑さ。複雑な作品が難しいとは限らないが、折り図の長さについては大抵は比例する。 「難しさ」をアピールするならこれを前面に出すのが多分正解。というか他の二つの難しさはあまり褒め言葉にならない。

(2)「手順の難度」は「折りやすさ」や「折る楽しさ」に直結する。また、講習等で教える場合でも重要。本当に重要なのだけれど、そもそも比較する機会がほとんどないこともあり、あまり認識されていないように思う。なるべく幅広い手順を比較検討してよりよいものを選びたい。

展開図で折るのが難しかった作品が、折り図ではスムーズに折れたというような場合、この折りやすい手順が工夫されていると考えてよい。 個人的な具体例を挙げると小松さんのカバで、山谷なしの展開図折りは難しかった。折り図の手順側については実際折った人なら説明は不要だろう。

(3)「折り図の分かりやすさ」は折り図自体の見やすさや、重なりなどの表現の分かりやすさ。 省エネ折り図の場合でも、正確に折るために最低限の情報は描く必要があると思う。基準は難しいけれど、「何を(what)」「どこに(where)」「どうやって(how)」 折るかは明確であってほしい。
例:「手前のカドを(what)すぐ後ろの隙間で(where)中わり折り(how)」を図なりネームなりで表す。

折り図というのはとにかく手間と時間がかかる。個人的には(3)は場合によっては手を抜いてもいいけれど、(2)はしっかり行うべきであると考えている。折り手順は折り紙屋にしかできない仕事であり責任です。大切なことなので何度でも言おう。手順は重要。

(3)はどこまで手間をかけるかの問題だけれど、基本的には想定する対象者のレベル(折り図読解力とでもいうのかな)に合わせることになる。簡単な作品や一般向けの折り図は丁寧に分かりやすく、たとえば内輪や自分用の記録のような対象が限定される場合であれば最低限でもいいのかもしれない。

最後に。どんな折り図であっても、まず折り図が描かれている時点で、その事自体は評価したい。多少わかりにくい折り図であっても、有ると無いとでは大違いのはず。(ない方がマシという酷い折り図はそうそうない。)


折り紙に関係ありそうでないスパムメール

頼んでもいないのにたくさん届く迷惑メール。フィルタとタイトルで判断してゴミ箱行きなのだけれど、つい中身を覗きたくなってしまうものもあります。目に止まってしまった秀逸(?)なタイトルのものをいくつか。

「折れました」

折り紙者にとって大変紛らわしいタイトル。ちょっと面白かったので今日の一言のネタにしました。 ちなみに本文は「心が折れました以下略」の出会い系サイトスパム。

「fuse box」

一般的にはヒューズボックスなんだけど、折り紙やってる人なら布施ボックスって読むよね。本文は、「manufacturer in China以下略」。余談ですが英語圏の折り紙ジョークで「トモコ・ヒューズの作品が好きなコンベンション初参加者」というのがあるらしい。

「open sink」

内容はよくあるスパムなのだけれど、タイトルがそのまましずめ折り。

「千羽鶴物語シリーズ」

過去一番の力作?は、 「《※千羽の力が急接近中!!》ソナタは運命の「人」運命の「力」運命の「星」の元に生まれた黄金の千羽の力を解放させる事の出来る選ばれし人間。さぁ、今こそ、真実の千羽鶴物語を覗くがいい。」 という長い”タイトル”の迷惑メール。千羽鶴物語ってなにそれ面白そう。

せっかくなので検索をしてみたら、なんと別バージョンがあるらしい。 http://nanndemo-ittyae.seesaa.net/article/403196244.html
§真実の千羽鶴物語§悲劇は二度と繰り返してはいけません。貴方は千羽の力を持つ人類の救世主。幼き少女を一刻も早く見つけ出し、ソナタの手で今行動すれば100%確実に救い出す事が出来る命をソナタの愛で助けてあげるのです!今こそ千の想いを一つにするのです!
……なんとなくあらすじは分かった気がする。


思いついてしまった作品

ネタ系作品でよく「思いついてしまった」という表現を使っていますが、これは揶揄とかではなく本当に文字通りの意味で、創作しようと考えていなくても、「折れる」と思いついてしまうことがあるのです。

いってしまうと一種の職業病なのですが、どうも私は、見ているものに対して「折り紙で折ったらどうなるか?」ということを常に頭の片隅で考えているようなのです。そしてたまに、意識していなくても勝手に構造等を思いついてしまう。できそうだとわかったら、確認してみないとすっきりしないので、実際に折ってみる。その結果が「思いついてしまった」作品になります。

ちなみに、上手くいってもダメでも、結果が分かった段階で満足してしまう事が多いので、確認のためだけに折った折りゴミの方もたくさんあります。


展開図折り基礎体力トレーニング

展開図折りについて、個人的に効果的なのでは?と思う練習方法で、なんとなく考えていた事を少し整理したものです。実際に効果があるかどうかは不明、といってしまうと身も蓋もないですが、少なくとも私は(いつの間にか)できるようになったという実績があります。 実際に試して見るのはもちろん、話のネタなどにご利用ください。

  • 提案するのは作品個別の事例ではなく、基礎体力の鍛え方。
  • 多分実践こそが一番効果的。理論と同時がベスト。理論だけはあまり意味がない。
  • 練習方法は、折り図を見て折ったものを、広げて再度畳む練習を繰り返す。
  • そこから展開図を描く。
  • さらに、描いた展開図から作品を複製する。
  • これで基礎体力が相当鍛えられるはず。

以下詳細。

そもそも、展開図は基本的な構造を伝えるための図であり、折り方を説明する図ではありません。 折り図と展開図を強引にたとえるなら、詳しい道案内にそって目的地に向かうのと、住所だけ渡されるくらいの差があります。つまり展開図折りでは、目的地の位置の確認・交通手段の選択、道順など、……言い換えると、どのように折り筋をつけるのか、またどのように折り畳んでいくのかなどを、折り手が考えなければいけないのです。また、展開図によっては、そもそも手順にできないケースもあり、展開図折りで手順に頼るのは限界があります。 と言うことで強引にまとめると、「手順に依存しない折り畳み」が、展開図折りに必要な技術なのです。

ではこれらはどうやって身につければ良いのでしょうか? 折り図を見ながら折るだけでも身につけられる部分はありますが、よほど意識して学ばない限りそれだけでは十分とは言えません。
そこで練習方法の提案として、いきなり展開図までジャンプせずに、まずは折り図で折ったものを利用して、そこから一歩進んで鍛えるのはどうでしょうか?  折り図からいきなり展開図から折ろうとするところに無理があるのです。折り図と展開図の中間を埋めて、少しづつ出来ることを増やそう。

具体的な練習方法として、まず折り図を見て折ったものを、すべて広げて正方形までもどして、それをもう一度畳んでみましょう。当然ですが、この時には折り図を見てはいけません。むしろ折り図の手順は頑張って忘れてください。なるべく手元の紙だけを使って行います。これは「折り線がついている状態から折り畳む」練習とでも言えばいいのでしょうか。鍛えられる事は、問題の「手順に依存しない折り畳み」はもちろんですが、それ以外にも

  • 構造と仕上がりの形の関連
  • 構造の理解
  • 紙の動きの理解
  • 目的とする形を得るための試行錯誤
  • 紙の折り畳み方法の定石や法則

などが挙げられます。どれも、展開図折りには必要不可欠なスキルです。

次に、広げた作品を元にして展開図を描いてみましょう。折りたたみに必要な線・使わない線の見分けや、構造や作品自体への理解はもちろん、なによりも実際に展開図を描いてみることで、展開図に関するほぼすべての事への理解が深まります。 方法は、広げたり畳んだりしている紙に書き込んでいくのがよいでしょう。折り線の凹凸があるので、サインペンなどが使いやすくおすすめです。赤黒2色で山谷を区別するなど工夫してみましょう。

最後に、上記の広げたり折りたたんだりした作品を、その現物と描き起こした展開図のみをつかって複製します。折り出しの方法や、線をつける順番などを考えて行わなければいけません。また、次の折り畳む段階でも、一度折りたたまれている紙と、そうでない紙では感覚や難度がけっこう違うものです。

これをなるべく多くの作品で行います。出来れば折り方をよく覚えていない、少し前に折ったものを使うとより効果的だと思います。また、コンベンションなどの教室で教わった作品など、折り図の存在しない作品の複製で行うのも緊張感があってよいでしょう。

なおこの方法は恐らく近道ではありません。しかしどんな作品にでも対応できる展開図折りの基礎体力をつけることができる……はずです。自分以外の事例を知らないので、効果は保証できないけれど、実際に行った人間が言うのだから、きっと大間違いではないと思います。

さらに、これらの練習で得られる技術や経験は、創作する時に役立つものばかりです。創作をするのに展開図折りが出来る事は必須ではありませんが、複雑な作品を創作したいのであれば、展開図に慣れておく事は決して無駄にはならないはずです。