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創作における「なんとなく」

創作で、「適当・なんとなく」とよく言いますが、実際どのように考えているのか?と疑問に思う人もいるかと思います。答えから言ってしまうと本当に「経験と勘からなんとなく」なのですが、これでは全く参考にならないので、比較的分かりやすそうな「カドの位置」を例にもう少しだけ詳しく考えてみます。

ある程度以上創作などの経験を積むと、「ある形を折り出すのに大体どのくらいの領域が必要なのか」が予測ができるようになります。もちろん完璧ではありませんが、それでもカドの配置や大きさを決めるには十分な情報です。折りたい形から必要な紙の領域と、さらにその情報を元にして大体のカドの位置などを予測し、その付近から使い易そうな比率や位置を選ぶ。実際にどこまで意識しているかはともかくとして、これがカド配置のケースの「なんとなく」の中身ではないかと思うのです。少なくとも自分の判断基準はそうであるとしか思えない。

さて、この考え方自体それなりにロジカルであると思うのです。ただ、これをだれでもできるかといわれると、恐らく難しい。そもそも前提として「知識や経験を元にした予測」なので、一定以上の知識や経験が必要になります。これに限らず、創作の技術や判断は本当に細かい技術や知識の集合体で、「知識と経験や、それに基づく勘」の割合が大きいものが多く、個別のケースであればある程度の説明はできるのですが、体系化は難しいのではないかと思うのです。

そして、そういった方法を使いたいのであれば、沢山折ってまず知識と経験を蓄えようという話になります。よく、創作をしたいという人への経験者からのアドバイスとして「いろいろな作品を折れ」と常に言われるのは、これが理由の一つなのではないのでしょうか。


アルドゥインの構造と領域の追加

アルドゥインは、「 シンプルな形を折り出し、複雑な仕上げを行う」という方針で創られています。これは外見だけではなく、構造でも同様の方針を取っています。創作手順を簡単に追って見ていきます。

とりあえず頭部は正方形のカドから折り出すことにします。また、ツノや顎などはカドの外側にスペースを追加して折り出す方法がよさそうです。簡単な構造で必要なカドを揃える事が出来ました。

頭部とその周りの全体の構造については、頭部と翼に同じ大きさのカドを割り当てられそうです。つまり鶴の基本形でOK。中心のカドも、胴のトゲ等に利用できそうです。

全体の構造はいくつか候補が考えられますが、とりあえず最もシンプルなものを採用します。

……あまりにも普通の構造で、これでいいのかと思うかもしれませんが、カドの出る位置は悪くないし、わざわざ必要以上に複雑にする意味はありません。昔『をる』誌上で前川さんも言っていましたが、構造がシンプルなのは歓迎すべき事で、わざわざ複雑にしなければいけないのではと気にするのはおかしい。

※領域の追加を前提とした場合、基礎の構造を選ぶ時には、カドの大きさより出ている位置を優先します。カドの大きさは領域の追加でいくらでも調整可能です。

これを基礎として、必要に応じて領域を追加していきます。ここはいろいろな要素が絡むので結果から。

一気に説明します。基礎構造(白)に、まずは頭部の折り出し用の領域を追加(赤)。 足の指と尾の装飾用に反対側にも追加(黄)。そして翼が少し小さいので、中心をぶった切ってさらに領域を追加します(青)。なおこの部分は、脚の装飾や翼の爪の折り出しにも利用しています。

※気がついた方もいるかもしれませんが、この3回の領域の追加は、すべて同じ幅になっています。このおかげて翼の爪部分をきれいに折り出す事が出来ます。また、比率も分かりやすくなります。

これで十分なカドは出そろいました。あとは仕上げればできあがりです。

 

 


平行以外の幅変換

実際に折っている時には当たり前で意識していないような事でも、整理しておくと意味があるかもしれない。

ということで、幅変換の話。一般的に蛇腹のテクニックというイメージがあるけれど、直角以外でも結構普通に使える。そして、実は平行のヒダ同士でなくても使える。

幅変換1

ヒダを細くするとこうなる。中心に現れる22.5度の直角三角形が面白い。もちろん、もっと細かくしても折れるはず。

幅変換2

平行じゃない方でもいけます。

幅変換3

ここまでくれば予想は出来ると思うけれど、当然両側が平行でない場合でも可能。

幅変換4

幅変換5

この辺になると、幅変換と意識されていないのではないだろうか。ただ本質的には同じ仕組みのはず。後は、ラインが一値ではないしずめ折りや、いわゆるSpread-sinkをして折り畳んだ形が同じ構造になります。

以上、細かい検証とかは好きな方にお任せします。