神谷版CFT
川島さんの鬼畜CFTの話を聞いて、古い制作メモを見直してみた。そして気がついてしまった。
「これもっと効率よく出来るな」
ということで、まずは旧作を評価。
・形は比率通りに折り出されている
・辺同士を組み合わせるパートが、強度のためとはいえ美しくない。
・√5を両側で2回折り出している。ある程度しょうがないとはいえ、無駄っぽい。
・上記の2つの影響で、折るのがめんどくさい。私が折って1パーツ6分くらい。60枚必要なので、とりあえず折るのに6時間はかかる。
で、改良。
・一回り大きくなった。
・√5の折り出しが一回になった。
・辺同士の接続については強度をある程度諦めることにしてみる。これは組んでみないと分からないか。
・かなり折りやすくなった。多分3分くらいで折れる。つまり全部で3-4時間か?
全体的に構造の無駄をそぎ落とし、整理した形になりました。
さて、折らなければ。
コンベンション等での講習について
コンベンションが終わった後に出すのもなんですが、今回自分の講習で気をつけていた事などを思い返して。
私自身は話の上手い人間ではないし、講習も上手なほうではないと考えてはいますが、数だけはそれなりにこなしているので、経験上使えそうな事をまとめておきます。
・教えるのには4~5倍くらいの時間がかかる。
たとえば50分教室なら、自分が10~15分くらいで折れるものがよい。110分教室なら自分で30分くらいまでかな。
講習が時間内に終わらないという状況は避けたいので、多少時間に余裕をみておいた方が良いように思います。
また、残り時間は常に確認しながら進めます。手元に見やすい時計を用意しておくと良いでしょう。私の場合は今年ついに鉄道時計を導入しました。
・作品に関するコネタを用意しておく。
時間が余った時とか、繰り返しの工程などでゆっくり折る人がいて手持ち無沙汰な人が多そうな時に、創作時の話や、題材についてなどの作品に関連した話をしておくと、空き時間が埋まってるように感じる……と思う。
折り図では解説されない話はある意味貴重なので、余裕があればいろいろ話しておくと付加価値になるかもしれません。
・難しい工程は教室を回って直接確認を。
ある程度時間に余裕がある時には意識的にやっています。ちゃんと折れているかの確認はもちろん、講習が丁寧な感じになる(多分)のと、上記のコネタと合わせて時間調整ができます。
・簡単な時間配分をしておく。
講習スピードのコントロールのため、ある程度時間配分を予測しておくと良いです。
たとえば50分講習の場合は、最初の15分で折り線をつけて、次の15分で基本形を畳んで、15分で仕上げ、のこりの5分は予備というような感じ。
実際にかかった時間と比べる事で、教室終了までの調整がしやすいはずです。
・拡大図用の実物を用意しておく。
手順が決まっている時限定。仕上げの段階で細かく折る場合、35cmの紙を使っても小さくなってしまうので、一部分のみを大きく折ったものを用意して使うとよいでしょう。
・折れない人を探す。
折れる人は、ちゃんと説明さえすれば勝手に折ってくれるので放置。代わりに講習スピードのボトルネックとなる折れない人に時間を割くようにします。
すこし不公平なような気もしますが、講習の進行を優先させます。折れる人に対しては、仕上げのコツやアレンジ方法などがあれば、それで埋め合わせができればベストです。
なお、本当に折れなくてどうしようもなさそうな人には、大変申し訳ないけれど諦めてもらいましょう。
・簡易仕上げバージョンを用意しておく。
受講者の平均レベルや読み違いなど、どうしても時間が足りなそうな時に、どうにか終えるための最終手段。
たとえば動物の脚などを簡単な中わり折りやつまむだけですませたり、細かい仕上げを省略することで、時間内に終わるように調整します。「仕上げは各自研究して下さい」などのポジティブな言い訳も併用するとよりうまくごまかせます。
以上。書き出してみると、時間内に終えるための話ばかりになりました。
最後に付け加えると、なんだかんだいっても一番頼りになるのは経験です。コンベンションでの講習はあくまでボランティアとして行うものなので、特に若い人であればある程度までなら失敗が許される面があります。受講者に対しては実験台として感謝しつつ、経験を積ませてさせていただくという謙虚な気持ちで、ぜひ挑戦してみて下さい。
コンベンションを目前にして
コンベンションも近づいてきたので、関連する神谷作品の扱い方をまとめておきます。
ちゃんと扱ってくれる方が、なるべく気兼ねなく使えるようにという事で。
・展示について
折紙探偵団コンベンションでは、他の人の作品を折るケースはあまりないように思いますが、もし神谷作品や、その改造やパロディ作品などを展示する場合、作者名・折り手を明記して下さい。また改造等の場合は、原作名も合わせて記載して下さい。
コンベンションでは神谷も展示を行います。また、とくに今年は展示エリアを一般の方にも解放する予定とのことなので、なるべく分かりやすい表記をお願いいたします。
記載例:「バハムート鶴式(原作:神谷哲史作バハムート) 作:山谷 折夫」
・神谷の展示の写真について
個人や大学サークルなどの小規模なグループの活動(ウェブサイト、ブログ、SNSなど)であれば、「作者名・大会名」を明記して頂ければOKです。ただし、もし当日スタッフから指示があればそれを優先して下さい。また、講習作品についても扱い方は同じとします。
写真に添えるテキスト例:「スレイプニル2.0(神谷哲史作) 第21回折紙探偵団コンベンション展示より」
以上、ご協力感謝します。
それでは楽しいコンベンションを。
蛇腹の派閥図
蛇腹折り派閥
│
├─蛇腹は32等分までだよ(低蛇腹派)
│ ├─大体のカドが出せれば十分だよ(仕上げ技術派)
│ ├─折り筋つけるのがめんどくさいよ(ものぐさ派)
│ ├─等分数を減らすのが腕の見せ所だよ(こだわり技巧派)
│ ├─紙の厚みがぁぁぁ(物理的限界派)
│ ├─高蛇腹は折り図が描きにくいよ(折り図化重視派)
│ └─15cmで折れない作品は認めないよ(市販用紙派)
├─32等分を超えてからが本番だよ(高蛇腹派)
│ ├─複雑であればあるほど凄いんだよ(等分数至上派)
│ ├─出来上がった形がよければいいんだよ(造形重視派)
│ │ ├─模様を折り出すのに必要だよ(しこみ折り派)
│ │ └─ ヒダが織りなす造形美がいいんだよ(ヒダ活用派)
│ ├─これでもまだ等分数が足りないのか……(必然高蛇腹派)
│ ├─多段しずめ折りよりましだよ(消極的蛇腹派)
│ ├─うわ…この作品の等分数、多すぎ…?(気づいたら増えてた派)
│ └─段折り楽しいよ(快楽主義派)
├─ただの蛇腹に興味はないよ(変則蛇腹派)
│ ├─効率を求めるなら神谷パターン必須だよ(効率重視派)
│ ├─必要に応じて等分数を変えればいいんだよ(等分数変換派)
│ └─他の角度との併用が面白いよ(クロスオーバー派)
├─蛇腹はすきじゃないよ(反蛇腹派)
│ ├─安易なダークサイドだよ(ジェダイ派)
│ ├─形に変化がなくて面白くないよ(形状否定派)
│ ├─22.5度系以外は認めないよ(22.5度原理主義派)
│ │ └─ 45度しか使っていないけど蛇腹も22.5度の一種だよ(蛇腹包括派)
│ └─多段しずめ折りの方がましだよ(消極的反蛇腹派)
├─時代は30度だよ(ヘックスプリーツ派)
├─いやいや変幻自在の整数比角度だよ(整数比角度派)
└─そんなことより折り紙おろうぜ(無関心派)
スレイプニルの創り方
構造上、頭部周辺にあまり余裕はないので、スペースを追加する必要がある。
足先の折り込みがもったいないので、外周にもヒダをいれよう。
そうなると、後ろ足の斜めに折っている分岐部分に問題が発生する。
どうせ紙が一回り大きくなるんだから、脚のカド配置は前後対称に。
頭部に使えそうな紙が余るのは尾だった側。前後入れ替えよう。
たてがみのヒダは脚の分岐のヒダをそのまま利用、耳は適当なところから出す。
中心部が畳めるのか?まあとりあえずは適当に。回りを固めてから後で整理しよう。
脚の仕上げはあまり変える必然性を感じない。尾は少し飾りをつける。
紙は余っている銀のやつでいいか。神話の灰色じゃないけれど、許容範囲。
という事で完成。せっかくなので日を合わせて投下。
展開図を整理。耳の部分の折り畳みもきれいにまとまった。
1万時間の法則
「1万時間の法則」といわれるものがあります。簡単にいえば、トップレベルに達するには1万時間の訓練が必要であるというようなもので、スポーツや芸術などの分野である程度の普遍性がある法則といわれています。
さて、では折り紙についてはどうなのでしょうか? 検証可能な神谷のケースで確認してみます。
とりあえず必要な「トップレベル」の定義なのですが、今回は仮に神谷が創作家としてある程度認められと思われる、バハムートやエンシェントドラゴンを創作した頃としてみます。自分で言うのもなんですが、それなりに妥当なのではないかと思います。
まず公言している通り、折り紙を始めたのは物心つくかつかないかのころ、恐らく2-3歳ごろではないかと思います。そしてエンシェントドラゴン等を創作したのが17歳くらいですので、この期間は約15年。
そこから計算すると、10000/(365日×15年)=1日あたり約2時間弱。あくまで平均ではありますが、なんともそれっぽい数字です。出来過ぎな感じもしますが、ほぼ当てはまっていといえるでしょう。これは他の人の場合がどうなのかが気になるところです。
また、1000時間を費やせば、他人に認められるレベルに達するともいわれています。例えば1日1時間とすると約3年、たしかに大抵のものは折れるレベルにはなれそうな感じです。
さて、あなたはこれまで折り紙にどのくらいの時間を費やしていますか?
SD暫
原作:言うまでもなく北條高史さんの暫
2000年に折っているらしい。これまで折ったものの中でも屈指の馬鹿作品(褒め言葉)である。今更ながら北條さんごめんなさい。
紙の1/4にシバラクヘッドを配置、その他の部分で残りのパーツを適当かつそれっぽく折り出している。また実は非対称作品である。
夏のコンベンションの夜に某K氏の自作4コマに登場したぴょんぴょん暫のイラストを見て、有志数名が再現を試みたのがそもそもの切っ掛け。このSD暫自体は少し後で折ったものだと思う。
余談だが、そのコンベンションの夜には再現された「ぴょんぴょん暫」や「アザラシバラク」などの迷作が折られた。
さらに余談だが、その「ぴょんぴょん暫」を折った少年(当時)は後のおりがみ新世代中心メンバーの1人である。
ブリルさんの富士山
英国を代表する折り紙作家、デビッド・ブリルさんの作品の中に「富士山」というものがあります。
伝承のコップを立体化させたような、ちょっと不思議な作品で、折る比率を変えて積み上げたものを富士山に見立てた作品です。
さて、私がブリルさんと初めて会ったのは、箱根で行われた日本折紙協会のシンポジウムでした。
ビバ!シリーズなどでブリルさんの名前はよく知っていたので、あの人がいる!と感動したものです。
ちなみに、これは私が初めて参加した折り紙の集まりでもあります。
そのシンポジウムで、ブリルさんはご当地作品?の富士山を講習を行いました。当日ブリルさんが教えたのは4段目までだったのですが、当時の神谷少年は同じ要領で5段目、6段目も折ってみました。それを見たブリルさんから褒めてもらえたのは、神谷少年にとっては結構嬉しい事だったのでした。
で、10年ほど時間が経ち、折紙少年は創作を始め、ブリルさんと再会しました。
ちょっとした移動中に話す機会があったので、そういえばと思い、「実は箱根のシンポジウムで……」と話してみたところ、さすがに覚えてはいなかったものの、あの時のクラスにいたのかと喜んでくれました。
というわけで、このブリルさんの富士山は、私にとってはちょっとした「思い出の作品」です。